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パナマ文書、中南海に走る激震――劉雲山の息子・劉樂飛の巻

2016年4月8日(金)15時56分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 習近平政権になってからは、チャイナ・セブン(習近平政権における中共中央政治局常務委員会委員7人)のほとんどが習近平の息がかかっている上、チャイナ・セブン入りする際に、反腐敗運動に賛同するか否かの誓約を要求されている。その上で第18回党大会の初日である2102年11月8日に胡錦濤が最後のスピーチで「腐敗問題を解決しなければ党が滅び、国が滅ぶ」と叫び、中共中央総書記に選ばれた11月15日、就任の挨拶で習近平も胡錦濤とまったく同じ言葉を使って反腐敗運動を誓った。
反腐敗は胡錦濤政権から習近平政権に移るときの最も大きな約束事であった。

 二人とも、腐敗問題が解決しなければ、これで共産党による一党支配体制は崩壊することを知っていたのだ。

 そこで習近平政権が誕生するや否や凄まじい反腐敗運動が始まった。その業務は「中共中央紀律検査委員会(中紀委)」が担う決まりがあるので、チャイナ・セブンの中の王岐山(党内序列ナンバー6)が中紀委・書記として大鉈(おおなた)を振い始めた。

 中紀委は定期的に中国の全ての組織や機関を巡回し、不正がないかを調べている。

 2015年9月、その一環として金融界にメスが入った。

 特に株の乱高下があまりに不自然で激しいので、捜査当局は背後に空売りをしている犯人がいると見定めていた。

 フォーカスが絞られたのが、中国証券最大手である「中信証券」だ。

 程博明・総経理や中国証券監督管理委員会の張育軍・主席補佐などが取り調べを受け、中信証券の副理事長・劉楽飛にフォーカスが絞られた。

 その父親で、チャイナ・セブンの党内序列ナンバー5でイデオロギー界に君臨する劉雲山は、チャイナ・ナイン時代にやはりイデオロギー担当として君臨していた李長春(党内序列ナンバー5)の腹心で、李長春はいうまでもなく江沢民派。

 習近平自身、江沢民の後ろ盾があってこそ、こんにちの地位を獲得できた経緯がある。

 しかし反腐敗運動は、腐敗のトップにいる江沢民の安全を脅かす。

 そこで捜査当局は、株式市場の乱高下の裏には、元をたどればこれら江沢民から派生する派閥の結託による株式市場の弱点への攻撃に原因があると見ていた。具体的にはインサイダー取引や情報漏洩(ろうえい)である。中信証券は、表向きは株式市場の危機に対処する救済機構を標榜しながら、裏では空売りをして株式市場を乱していたのだ。

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