最新記事

対テロ対策

アメリカの空港警備改革、ベルギーテロ後もなぜ加速しないのか

エリア毎に所轄当局が混在することが警備改革の妨げに

2016年4月3日(日)14時20分

3月25日、ベルギー爆弾攻撃の発生を受けて、NYのジョン・F・ケネディ空港では、カーキ色の迷彩服を着た米陸軍兵士が自動小銃を携行し、警察官は黒い防弾ベストに身を固め、蛍光イエローのベストを着た民間の警備員が人の流れを誘導している。さまざまな制服が混在しているのは、警備の管轄権が重複している証拠だ。写真は22日、同空港の国際ターミナル外で警備にあたる港湾警察(2016年 ロイター/Mike Segar)

 ニューヨークのジョン・F・ケネディ(JFK)空港を訪れた旅行者は、ベルギー首都ブリュッセルで発生した爆弾攻撃を受けた「力の誇示」を目にすることになった。

 カーキ色の迷彩服を着た米陸軍兵士が自動小銃を携行し、警察官は黒い防弾ベストに身を固め、蛍光イエローのベストを着た民間の警備員が人の流れを誘導している。

 さまざまな制服が混在しているのは、特定区域の警備に関して責任を持つのが、連邦政府なのか、州なのか、地方当局なのか、あるいは航空会社なのかを決定する管轄権が重複している証拠である。

 そのため、ブリュッセルで多数の死者を伴う攻撃が発生したにもかかわらず、JFK空港や他の米主要空港における全面的な警備改革が困難になっている。

 JFK空港では、港湾管理委員会(それ自体がニューヨーク州とニュージャージー州の共同運営である)の警察部門が第1の法執行権限を有している。身分証明書のチェックを行うのは米国税関国境警備局だ。保安検査場でのチェックを担当するのは、国土安全保障省の1部門である運輸保安局である。

 これらに比べれば目立たないが、連邦捜査局(FBI)もよく空港に姿を見せるし、農務省やアルコールたばこ火器爆発物取締局など、他の国家機関も顔を出す。航空会社には自前の制服警備員がいる。さらに、何か問題が起きると港湾管理委員会はニューヨーク市警を呼んでくる。

 「力の誇示」は旅行者を安心させるかもしれないが、こうした所轄当局の混在は、例えば複数の航空会社のターミナルを単一の保安ゾーンにまとめるといった、セキュリティ手続の変革という点では障害になりかねない。

 少なくとも31人の犠牲者を出した22日のブリュッセル同時攻撃のうち、空港の保安検査場で発生した爆弾攻撃を未然に防ぐには、こうした保安ゾーンの統一が一つの方法だという意見もある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

TSMC、企業秘密管理システムを欧米企業に販売へ=

ワールド

ウィッカー米上院議員が訪台、「台湾に自由の権利ある

ワールド

タイ憲法裁、ペートンタン首相の失職認める 倫理規定

ワールド

北朝鮮、昨年は8年ぶり高成長 ロシアとの連携強化で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 8
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中