アメリカの空港警備改革、ベルギーテロ後もなぜ加速しないのか
エリア毎に所轄当局が混在することが警備改革の妨げに

3月25日、ベルギー爆弾攻撃の発生を受けて、NYのジョン・F・ケネディ空港では、カーキ色の迷彩服を着た米陸軍兵士が自動小銃を携行し、警察官は黒い防弾ベストに身を固め、蛍光イエローのベストを着た民間の警備員が人の流れを誘導している。さまざまな制服が混在しているのは、警備の管轄権が重複している証拠だ。写真は22日、同空港の国際ターミナル外で警備にあたる港湾警察(2016年 ロイター/Mike Segar)
ニューヨークのジョン・F・ケネディ(JFK)空港を訪れた旅行者は、ベルギー首都ブリュッセルで発生した爆弾攻撃を受けた「力の誇示」を目にすることになった。
カーキ色の迷彩服を着た米陸軍兵士が自動小銃を携行し、警察官は黒い防弾ベストに身を固め、蛍光イエローのベストを着た民間の警備員が人の流れを誘導している。
さまざまな制服が混在しているのは、特定区域の警備に関して責任を持つのが、連邦政府なのか、州なのか、地方当局なのか、あるいは航空会社なのかを決定する管轄権が重複している証拠である。
そのため、ブリュッセルで多数の死者を伴う攻撃が発生したにもかかわらず、JFK空港や他の米主要空港における全面的な警備改革が困難になっている。
JFK空港では、港湾管理委員会(それ自体がニューヨーク州とニュージャージー州の共同運営である)の警察部門が第1の法執行権限を有している。身分証明書のチェックを行うのは米国税関国境警備局だ。保安検査場でのチェックを担当するのは、国土安全保障省の1部門である運輸保安局である。
これらに比べれば目立たないが、連邦捜査局(FBI)もよく空港に姿を見せるし、農務省やアルコールたばこ火器爆発物取締局など、他の国家機関も顔を出す。航空会社には自前の制服警備員がいる。さらに、何か問題が起きると港湾管理委員会はニューヨーク市警を呼んでくる。
「力の誇示」は旅行者を安心させるかもしれないが、こうした所轄当局の混在は、例えば複数の航空会社のターミナルを単一の保安ゾーンにまとめるといった、セキュリティ手続の変革という点では障害になりかねない。
少なくとも31人の犠牲者を出した22日のブリュッセル同時攻撃のうち、空港の保安検査場で発生した爆弾攻撃を未然に防ぐには、こうした保安ゾーンの統一が一つの方法だという意見もある。