最新記事

中東

改革はどこへ?覆面の「道徳ポリス」7000人が市民を監視するイラン

2月の総選挙では改革派が勝利したのに、警察が潜入して市民を見張る強硬路線も健在

2016年4月20日(水)20時07分
ジャック・ムーア

抑圧の道具 イランでは保守的な服装を好まない女性が増えてきた Raheb Homavandi/TIMA-REUTERS

 イランの警察が7000人の覆面捜査官を首都テヘランの街中に潜ませ、市民の道徳違反行為に目を光らせている。取り締まるのは、女性のベール使いや反社会的行為などの犯罪だ。テヘランの警察署長フセイン・サジェディニアが18日、イラン司法府公認のニュース機関ミザン・オンラインに語った。

 AFP通信によれば、「覆面捜査官たちは普段見逃されている犯罪に取り組む」と語った警察署長。「ヒジャブ(髪の毛を隠すスカーフ)が正しくなかったり、車の中でベールを脱いだり、あるいは無謀な運転、女性に対する嫌がらせ、騒音といった問題を優先する」という。

【参考記事】同性愛の客室乗務員がなぜ、同性愛は死刑のイランに飛ばなければならないのか

 覆面捜査官たちは、直接その場で取り締まるのではなく、車のナンバーを記録して警察にテキストメッセージを送り、それに基づいて警官が動く。

 イランでは女性のヒジャブ着用が義務付けられており、1979年の革命以来、イラン指導部は国民に保守的な理想を押し付けようとしてきた。しかし、一部の女性たち――特に都市部の女性――は今や、ゆったりとしたスカーフで着飾り、保守的な服装を避けるようになっている。国の宗教権威が許容する範囲も徐々に緩んできていた。

【参考記事】服装の悲劇に泣いたイランのなでしこ

 中央アジアで放送されているラジオ局「自由欧州放送」によれば、国の干渉が強まったことに対し、イラン国内外のイラン人がソーシャルメディア上で非難の声を挙げている。「ビッグブラザーが見ているぞ!」という書き込みや、「過剰な取り締まりが不安定化をもたらす」と示唆したものもあった。

 2月に実施された総選挙では、ハサン・ロウハニ大統領率いる改革派勢力が勝利し、イランで改革が進む兆しはあった。改革を後押しするのは意欲的な若者たち。イランでは人口8000万人弱の約60%が30歳以下だ。保守派と改革勢力の小競り合いから目が離せない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中