最新記事

インタビュー

【再録】現代史上、最も名高い2人の新旧米国務長官

2016年3月30日(水)15時50分
ジョン・ミーチャム(米国版編集長)

クリントン ヘンリーの発言に付け加えるとすれば、緊急課題と重要課題を見極めるとともに、今は緊急でも重要でもない問題が来年や再来年にはそうなることもあり得る以上、長期的傾向にも目を向けなければならない。そのためには、別種のスキルが必要だ。

 私は常に国務省のスタッフにこう確認している。「エネルギー保障やエネルギー自給の問題はどうするの? EU(欧州連合)がエネルギー需要に関して共通政策を構築できるよう、ヨーロッパにどう働き掛ける? 食料安全保障の問題は?」と。

 08年には(穀物価格高騰で)各地で暴動が発生した。気候変動が起こり、人口移動のパターンも変化している。食料問題の重要度は今後さらに高くなる。新型インフルエンザの脅威で、世界の医療問題と併せてパンデミック(世界的流行病)にどう対処するかも課題になっている。

 アメリカ政府は最近、北極圏に注目し始めている。海氷や氷河の融解が進みシーレーン(海上交通路)が変化している北極海は、5つの国と接している。(その1つである)ロシアは10年に北極遠征を行って北極点に国旗を立てると言うが、カナダは「そんなことはするな」と反対している。北極圏問題は大いに関心を持つべき分野だが、今のところ記者会見やホワイトハウスの議題になっていない。

 つまり各種の問題が絡み合っているということだ。緊急課題と重要課題と長期的課題がある。

「オバマ大統領とは毎週2人だけで話をしている」――クリントン

――国務長官と大統領の関係はどれほど重要なのか。

クリントン 極めて重要だと考えている。政策を立案し、重大な決断を下す際にアドバイスを提供し、政策決定に外交や発展という要素を反映させるには大統領との良好な関係が欠かせない。

 ヘンリーも含めて私が話をしたことがある歴代の国務長官も同じ意見だと思うが、この立場にある者は多くの時間と労力を注ぎ込んで大統領との関係を築き上げなければならない。

 私はジェームズ・ジョーンズ(国家安全保障問題担当大統領補佐官)だけでなく、ロバート・ゲーツ(国防長官)とも緊密に協力している。だが結局のところ、最終的な決定権を持つのは大統領だ。難しい決断が行われる場所は大統領執務室にほかならない。

 大統領執務室に乗り込んで「私はこうすべきだと思います」と主張するようなやり方は通じない。よく考えて努力を重ねなければ。(バラク・オバマ)大統領とは週1回、2人で話をするし、安全保障担当チームの会合でも顔を合わせる。意思疎通は欠かさない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中