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中国が南シナ海に造る「万里の長城」の意外なもろさ

2016年3月17日(木)17時00分
楊海英(本誌コラムニスト)

「万里の長城は草原の遊牧民を威嚇するための装置だった」「中国国内の不満分子が遊牧民の自由世界に亡命するのを阻止する目的で建てた」「長期かつ大規模な工事を通して社会基盤を整えようとした」──長城の建設をめぐる諸説は尽きない。
ただどちらにしても、中国人が誇張するほど軍事的な役割を果たさなかったのは事実だ。そして、長大な建築物を造り上げるのに周辺の樹木はすっかり伐採し尽くされ、長城に沿って砂漠地帯が横たわっているのもまた事実である。

【参考記事】南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?

 万里の長城はまさに「負の遺産」そのもの。騎馬弓射によって合理的に武装した遊牧民に徒歩の中国兵が太刀打ちできなかったのも、長城が役に立たなかった敗因の1つだろう。

 しかし、南シナ海の「万里の長城」は事情が異なる。人工島に最新鋭のミサイルとレーダーが配備されているだけではない。これに対抗する東南アジア諸国は遊牧民に比べると戦が下手な善良な民族からなる。

 日本の安倍政権はフィリピンやベトナムなどに自衛隊の中古武器類を提供する方向だという。これも米軍の警戒監視活動と並んで、「万里の長城」に対する次善の策になるだろう。

[2016年3月22日号掲載]

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