最新記事

全人代

習近平政権初の五カ年計画発表――中国の苦悩にじむ全人代

2016年3月7日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

1. 中高速度の経済成長を目指す。2020年までに1人当たりの平均収入を2010年の2倍にする。GDP成長率は平均6.5%を目指す。産業の構造転換を推進し、2020年までにGDP90兆円(1570兆円)に達する。(筆者注:2006年の第11次五カ年計画ではGDP成長率を7.5%に設定し、2011年の第12次五カ年計画では7.0%に設定した。それが今回は6.5%となり、0.5%ずつ減少している。11年目で、目標値は一段と低くなった。)

2. イノベーションを重視。国際的競争力のあるフロントランナーを育成し、2020年まえに経済成長に対する科学技術の貢献度が60%に達するようにする。

3. 国家新型城鎮化(都市化)計画(2014年~2020年)の推進と完成。定住人口の都市化率60%および戸籍人口の都市化率45%を目指す。

4. 環境保護。生態文明建設。今後5年間で、用水量、エネルギー消費量および二酸化炭素放出量をそれぞれ23%、15%、18%減少させる。空気汚染に関して良好状態の日数が80%を越えるようにする。

5. 改革開放を深化させ、構造改革して新体制を構築する。(筆者注:内容が複雑で達成目標が明確でないので省略するが、ひとことで言えば、中国の一党支配体制が内包している構造的矛盾から抜け出せない中国の姿が浮き彫りになっていると言える。李克強首相の演説だけでは解読できないが、真に改革開放を深化させ構造改革を断行して新体制を作れば、それは一党支配体制の崩壊へと行きつくので、本当の意味での構造改革も新体制構築も、実はできない。そこには根本的内部矛盾と中国の限界がある。)

6. 民生福祉問題を改善する。労働年齢が受けている教育年数を、現在の10.23年から10.8年まで引き上げる。平均寿命を1歳引き上げる。5000万人を貧困から脱却させる。中国は現在、9億の労働人口のうち、約1億人が高等教育あるいは(職業学校などの)専門教育を受けているので、人材において強い原動力を持っている。

2016年の重点活動――実際は6.5%の目標値と構造改革の矛盾

 3月4日付けの本コラム<「神曲」ラップと「ギャップ萌え」で党宣伝をする中国――若者に迎合し>で説明した「四つの全面」を国家基本戦略として、以下の目標を立てるとした。

1.GDP成長率は6.5%~7%、国民消費価格の上げ幅は3%前後とする。都市における新規雇用者数1000万人以上、失業率4.5%以内を目指す(筆者注:辛うじて区間を示す形で7%に引っかかってはいるが、これはほぼ気分の問題で、実際はこのたびの新五カ年計画と同じように、下限の6.5%を目標としていると解釈していいだろう)。

【参考記事】中国の成長率は本当は何パーセントなのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中