最新記事

世界経済

マイナス金利が引き起こす金融不安、蘇るリーマンショックの悪夢

2016年2月10日(水)10時50分

 ドイツ銀行は世界的な金融取引の中核を担う。「もし何かがあれば、その影響は破綻したリーマン・ブラザーズの比ではない」(エモリキャピタルマネジメント代表取締役の江守哲氏)という警戒感が市場に広がったことも、リスクオフを加速させた要因となった。

「恐怖指数」はまだ不安の段階

 ドイツ銀行の業績悪化はすでに知られた話であり、再浮上したギリシャの財政問題も今に始まったことではない。リーマンショックを経て金融規制が強化された結果、銀行など金融機関は当時と比べ無謀な投資は行いにくくなっている。

 BNPパリバ証券・チーフクレジットアナリストの中空麻奈氏は「銀行などのレバレッジ投資はかなり減少している。突発的な破綻などがない限り、リーマンショックのようなことにはならない」とみる。

 マイナス金利政策には、ポジティブな評価もある。

 SMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏は、日銀のマイナス金利政策による日本経済への影響を試算。銀行は貸出金利の低下で3830億円の減益要因になる一方、保有国債の日銀への売却益が8781億円見込めるとした。国債売却によってクーポン(利息)収入が5270億円減るが、預金金利の低下もあり、銀行部門トータルでは84億円のプラスになるとしている。

 「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>は8日、26ポイントまで上昇したが、昨年8月の中国ショック時(最大53ポイント)を下回り、リーマンショック時(最大89ポイント)の3分の1以下だ。「市場のリスクオフも、まだ漠然とした不安の段階に過ぎない」(外資系証券)ともいえる。

狭い政策対応余地も懸念材料

 ただ、リーマンショック当時と比べ、政策対応の余地は大きく縮んでいる。家計の債務などは改善したが、どの国も政府債務が巨大化する中で財政余地は乏しい。金融緩和は量の拡大からマイナス金利の世界にまで踏み込んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

国内百貨店8月売上高、4社中3社が2月以来の前年比

ワールド

25年夏の平均気温は過去最高、今後も気温高くなる見

ワールド

モディ氏がプーチン氏と会談、「ロシアとインドは困難

ワールド

債券市場の機能度DI、8月はマイナス34 超長期懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマンスも変える「頸部トレーニング」の真実とは?
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 6
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中