最新記事

朝鮮半島

北朝鮮がアメリカに平和協定要求――新華網は2015年10月18日にすでに報道

2016年2月22日(月)20時50分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 アメリカは休戦協定に署名した3カ月後の1953年10月1日に韓国と新たに「米韓相互防衛条約」を結んだだけでなく、休戦協定に違反して韓国に米軍を駐留させている、と北朝鮮は主張する。

 だから、休戦協定などすでに無効で、改めて連合国を代表してサインした国として、アメリカは北朝鮮(および中国)と、「終戦」を意味する「平和協定」を結ぶべきである、というのが、北朝鮮の要求だ。

 今般ウォール・ストリート・ジャーナルが発表した「北朝鮮がアメリカに平和協定締結を要求していた」という時期は、おそらく「新華網」と「人民網」などにあるように、2015年10月18日に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』が掲載した北朝鮮外務省の声明(10月17日)の流れを受けていると思われる。

 それは明らかに北朝鮮が核実験をおこなう前の一段階に当たる。

なぜ「2015年10月17日」に平和協定をアメリカに呼びかけたのか?

 多くの事象があったので、一つ一つ記憶していることは困難だが、2015年10月16日に何が起きていたかを思い出してみよう。

 実は2015年10月16日、韓国の朴 槿恵(パク・クネ)大統領はアメリカのホワイトハウスでオバマ大統領と米韓首脳会談を行った。会談後の共同記者会見で、両首脳は「北朝鮮の非核化」に言及し、「北朝鮮の核問題は最大限の緊急性と決意を以て外交的に解決すべき問題」と位置付けて、その解決に対する取り組みを強化すると発表した。

 この共同記者会見に対して北朝鮮の外務省が激しく反応したのである。

 だから10月17日に声明を出し、それを10月18日に中国大陸の政府系メディアが一斉に報道した、という経緯だ。

北朝鮮外務省の声明内容

 結果、北朝鮮外務省は、おおむね以下のような声明を発表した。

――もし朝鮮半島の問題を解決しようというのなら、平和協定締結が最優先されるべきだ。さもなければ、いかなる問題も解決できない。朝鮮半島非核化の問題が失敗に終わっている最大の原因は、アメリカが(北)朝鮮を敵視する政策を採っているからだ。米韓の大規模軍事演習をしたり、韓国に米軍を駐留させるだけでなく、アメリカはさらに強力な核攻撃を可能にさせる軍事的挑発を韓国に持ち込もうとしている。これは(朝鮮戦争の休戦協定が約束した)平和的解決を遅らせるだけでなく、朝鮮半島に悪循環をもたらしている。

 最も優先的に解決しなければならないのは「停戦(休戦)協定」を「平和協定」に持っていくことだ。

 朝鮮半島に平和をもたらす方法は二つある。

 その一は、(北)朝鮮が核を中心として自衛的国防力を高めていき、冷戦構造の形を取って、アメリカが(朝鮮戦争休戦後)間断なく強めている軍事的威嚇に対してバランスを保つこと。
もう一つは、アメリカが(北)朝鮮に対する敵視政策を放棄して、(北)朝鮮が定義している平和条約締結に署名し、互いに信頼する、真の永久的な平和を出現させることだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国のウィーライド、新規上場で公募価格決定

ビジネス

伊フェラーリ、第3四半期コア利益が予想上回る 高価

ワールド

中国首相、貿易制限を批判 上海で国際輸入博覧会が開

ワールド

ノルウェー議会、政府系ファンドの投資倫理指針見直し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中