最新記事

中国

河南省、巨大な毛沢東像建造と撤去――中国人民から見た毛沢東と政府の思惑

2016年1月12日(火)13時53分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

河南省に建てられた36.6メートルの毛沢東像 REUTERS

 河南省農村の空き地に300万元を使って建てられた36.6メートルの毛沢東像が1月8日に取り壊された。庶民はなぜ毛沢東の巨像を建て、そして中国政府はなぜ取り壊しを命じたのか?人民と習近平政権にとっての毛沢東とは何か?

総工費300万元(約5400万円)かけて建てた毛沢東巨像

 2016年1月4日、中国のネットユーザーがアップした情報に基づいて、翌5日に香港の鳳凰資訊が伝えた。河南省開封市通許県孫営郷朱氏崗村という片田舎の空き地に、中国建国の父である毛沢東の巨像が建てられたというのだ。その高さは36.6メートルで表面は金色に塗られている。

 村の数名の企業家と現地村民の有志たちが300万元を拠出して建造したという。

 ここは荒地の非農耕地なので、村役場に届け出をせずに、2015年3月に着工し、年末にほぼ出来上がった。地元当局は登記や審査を経ていない「違法建造物」であるとして、1月8日に、いきなり取り壊しにかかってしまった。

 その取り壊し現場を報道した画像(同じく香港の鳳凰ウェブサイト)があるので、それをご覧いただきたい。

 建てるのも常識外のスケールだが、それをいきなり取り壊すというのも、ちょっと「あり得ない」動き方だ。

 未登記であるなら罰金でも科して、登記再申請でもさせればいいではないかと思うが、そうしないところに、現在の中国の
「毛沢東に対する微妙な思い」がある。

 県の文化局によれば、「朱氏崗村は観光地では片田舎なので、そのように地における彫像建築は、決して観光文化管理規定には触れず、したがって行政の文化部門が審査に当たる対象ではない」と責任の追及を逃れている。

 現地の園林部門はまた、「われわれは城鎮(都市と町)における彫像なら審査対象とするが、農村に関しては管轄外だから...」と、ここも責任逃れをしている。

 取り壊したのは、県の監察大隊であるという。

人民の中における「毛沢東」

 毛沢東がどれほど多くの中国人民を殺戮したか、今さら言うまでもないだろう。中国人による推計によって、5千万人とも7千万人とも言われている。それも中華人民共和国(現在の中国)が建国されたあとの、「戦争のない時代」に殺した人民の数だけだから、すべて政治闘争あるいはイデオロギー闘争のためだったと言えよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中