最新記事

アメリカ

テレビ通販で銃を売るってアメリカは正気?

2015年12月29日(火)10時00分
ミシェル・ゴーマン

 しかし、こうした常識が通用しないのが現実だ。カリフォルニアには全米で最も厳しい銃規制法がある。ほとんどの対人殺傷用銃器を禁じ、大容量の弾倉の販売・譲渡も禁止。販売店、ネット販売、銃見本市を問わず、銃を購入する前には身元審査に通る必要がある。

 それでもサンバーナディーノの大量殺人を防ぐことはできなかった。「善人が銃を持つことを禁じても、犯罪者やテロリストが銃を手に入れるのを止めることはできない」と、プラットは言う。

危険人物への販売をどう止めるのか

 驚いたことに、銃の安全対策強化を求める人々の中には、ガンTVが身元審査の推進のきっかけになると考える人もいる。銃犯罪撲滅を目指して活動する団体「責任ある解決策を求めるアメリカ人」の広報担当マーク・プレンティスは、「何より重要なのは、重罪犯罪者や家庭内暴力の加害者といった危険人物が、ガンTVで銃を買えないようにすることだ。彼らは身元審査に通るはずがないのだから」と言う。

 銃購入の身元審査に使われるのは全米犯罪歴即時照合システムだが、1日の処理数で過去最高だったのは26人が犠牲になった12年のサンディーフック小学校(コネティカット州)銃乱射事件の翌日の17万7170件。先月27日にはその記録を塗り替える、18万5345件の照合があった。

 この日は感謝祭翌日のブラックフライデーといわれ、1年で最も多くの買い物客でにぎわう日。昨年のブラックフライデーと比べ、照合数は約5%増加したという。そして同じ日、コロラド州の医療施設では銃乱射で3人が死亡し、9人が負傷した。

 恐ろしい事件が起きると銃を捨てるのでなく、銃を買いたくなる。そんなアメリカ人の心理が変わらなければ、乱射事件の悲劇はいつまでも続くだろう。

[2015年12月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中