最新記事

高速鉄道

インド、日本の新幹線を採用――中国の反応と今後の日中バランス

2015年12月15日(火)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 だからこのたび中国政府の外交部は「鉄道分野において中印両国の指導者は、重要な共通認識を達成している。双方は各分野で実務的協力を加速することで一致し、鉄道はその中の重要な内容だ。中印双方は密接な意思疎通を保持している」と、抗議にも似た不満を、9日の時点で表明していた。

 しかし、12日に結果は出てしまった。

 そこで中国政府の通信社である新華社のウェブサイト「新華網」(網:ウェブサイト)は、「日本がインドの高速鉄道プロジェクトを持っていってしまい、軍事協定に署名した」と激しい非難報道をしている。高速鉄道建設の名を借りて、本当は軍事同盟を結ぼうとしているのだ、という意味である。日本はすでに武器輸出を解禁しており、インドはUS-2(海上自衛隊が運用する救難飛行艇)を含め先進的な武器装備の輸入を目指していると、軍事方向に論点をそらしている。

 その一方で中国のネット空間には、インドの「経済時報」(The Economic Times)が「日本の鉄道技術は中国の技術よりも100倍もいい」というネットユーザーのコメントを載せたという情報が溢れかえっている。

 それはそうだろう。

 中国が高速鉄道建設に正式に入った2004年(最初のスタートは1990年)、本来なら新幹線技術を導入するはずだったのに、2005年の反日運動により阻止されてしまった。改革開放の総指揮者であった鄧小平は、日本の新幹線に惚れ込んだからこそ、中国の高速鉄道建設を急がせたのだったが、その後継者の江沢民(元国家主席)が反日の精神を扇動し、結果、自国に不利な状況を招いてしまった。そこでやむなくフランスのアルストム、カナダのボンバルディア・トランスポーテーションおよび日本の川崎重工などの「寄せ集め技術」を導入することになったため、事故が続発。その陰には江沢民の後ろ盾によって鉄道部部長になった劉志軍の「独立王国」いや、「腐敗王国」がある。劉志軍は腐敗により、技術に注がれるはずのお金を「100人以上の女」や「300棟以上の住宅」や「無数のポケットの中」などに注いでしまったのだ。事故が多発した原因には、こういう情況もある(詳細は『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅びる』の111頁~130頁)。(ちなみに死刑判決を受けた劉志軍だったが、本日12月14日午後、無期懲役に切り替わった。)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中