最新記事

民主化

中国民主活動家締めつけに見る習近平の思惑

2015年11月30日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 知識人で新聞記者でもあった鉄流氏は1957年に投獄され、毛沢東が死去し文化大革命が終わった後しばらくしてから1980年に釈放された。壮年時代の23年間を獄中で過ごしたことになる。

 1957年に投獄された知識人は年長者が多い。獄死しているか、釈放されても高齢だったため既にこの世にいない。

 わずかな生存者も年々減っていくため、有志たちが自らを「五七老人」と称して集まり、2008年7月10日から『往事微痕』(過去の傷跡)という文集(小冊子)を作るようになった(この小冊子の表紙画像は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.301にある)。自分たちの牢獄における生活や投獄前後あるいは釈放された後の扱いなど、ありのままの事実を綴ったものだ。費用は互いの持ち寄りで、出版するたびに筆者も一部もらっていた。鉄流氏の望みは、「いつかこれを日本語に翻訳して、世界の人に、中国で何が起きていたのか、何が起きているのかを知らせてくれ」というものだった。

 その宿題を抱えつつ、目前の執筆に没頭している内に、2014年8月15日を最後に、頻繁に来ていたメールがピタリと止まってしまった。

 9月18日になると、その仲間からメールがあり、9月14日に鉄流氏が投獄されたという。そして鉄流氏の家にあったパソコンなど、すべての資料が北京の公安局に押収されたとのこと。

 メールは多くの民主活動家にCCする形で送られてきていたので、筆者のメールアドレスもメール内容も、すべて当局に押さえられてしまっているだろう。このルートのCCメールは、以来、一斉に遮断されてしまった。

 2015年2月25日になると、他のルートから鉄流氏に2年6カ月の懲役刑が出されたという知らせがあった。

 81歳の老人に、である!

 形式上の罪は、彼が無許可で『往事微痕』を販売していたという「違法経営」というから噴飯ものだ。細々と出していた小冊子は事実を歴史に刻んでおきたいという遺言状のようなもので、有志が金を持ちあって無料で配布していたのに過ぎない。

 巻頭言を書いた謝韜(シェ・タオ)氏(1922年生まれ)は、筆者がいた中国社会科学院の社会科学文献出版社の編集長をしていたこともある中共の老幹部で、筆者の親友だった。2010年に88歳で他界されたが、こういった老幹部の仲間たちは、今もなお生きながらえながら、現在の中国共産党政権のあり方を批判して続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、予想通り金利据え置き 利下げ余地

ワールド

イラン最高安保委事務局長ラリジャニ氏が死亡=イスラ

ワールド

EU、ロシアとのエネ取引意向ない=カラス外交安全保

ワールド

EU、米国の「予測不能性」織り込み=カラス上級代表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 7
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中