最新記事

中東

ロシア軍機撃墜でトルコに報復、投資凍結・輸入制限など経済制裁策定

2015年11月27日(金)10時10分

11月26日、ロシア軍機撃墜を受けて、ロシアはトルコへの経済制裁措置の策定に着手した。写真はプーチン大統領。モスクワで17日撮影(2015年 ロイター/Alexei Nikolskyi/SPUTNIK/Kremlin)

 トルコによるロシア軍機撃墜を受けて、ロシアは報復措置としてトルコへの経済制裁措置の策定に着手した。事件に関するトルコ側からの妥当な説明を待っているとしているが、トルコは領空侵犯に対する正当な対応との立場を崩しておらず、両国間で非難の応酬が続いている。

 ロシアのメドベージェフ首相は、トルコとの共同投資プロジェクトの凍結やトルコ産農産物・食料の輸入制限などを含む対抗措置の策定を政府に命じた。

 ウリュカエフ経済発展相は、トルコ━ロシア間の航空便の運航制限や共同の自由貿易区開設に向けた準備停止に加え、ロシア産天然ガスをトルコ経由で欧州に供給するパイプライン「トルコストリーム」やロシアがトルコで建設中の原発などの大型プロジェクトについても制限を加える可能性を示唆した。

 ロシア農業省はトルコ産農作物の約15%がロシアの基準を満たしていないとして、食品安全規制当局に対し検査を強化するよう指示した。トルコは主に野菜、果物、肉類をロシアへ輸出している。

 またロシア産小麦については、最大の輸入国であるトルコへの新たな取引を中止した。

 観光面でも、ロシアの旅行代理店少なくとも大手2社がトルコのツアーパッケージ販売を中止するなどの動きが出ている。トルコを訪問する観光客の中でロシア人はドイツ人に次いで多く、年間40億ドルの収入をもたらすとされる。

 これについてトルコのエルドアン大統領は「感情的」かつ「不適切な」対応として批判。トルコは過激派組織「イスラム国」から石油の供給を受けているとロシアのプーチン大統領が指摘したことに対しては、シリアのアサド大統領、およびその後ろ盾であるロシアなどがイスラム国を資金、軍事面で支えていると反論した。

 またCNNに対しては、事件について謝罪するのは「トルコではなくロシアの方だ」と述べた。

 ロシアが対抗措置として経済制裁に傾く背景には、軍事行動を強化して事態をエスカレートすれば、シリア問題への国際的な協調対応でロシアが主導権を握るとの目的が台無しになるとの計算が働いていることがあるようだ。

 トルコ株式市場は、ロシアとの緊張の高まりを嫌気し2.4%値下がりしている。

 

[イスタンブール/モスクワ 26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2015トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中