最新記事

日中関係

安保法案を中国はどう見ているか?――ネットの声も含めて

国民を守るための「戦争法案」の欺瞞を笑う声から平和を愛する日本人に共感する声まで

2015年9月15日(火)16時15分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

歴史の記憶 日本の安保法案に反対する中国人のデモ(今年7月、香港) Bobby Yip-REUTERS

 日本の安保法案に関して官製メディアがどのように報じ、ネットユーザーはどう見ているのか。その中間的な香港「鳳凰網」の解説を含めて、中国の目を見てみよう。日本の抗議デモに対する声も興味深い。

官製メディア

 まず官製メディアの象徴である中国国営の中央テレビ局CCTVは、昨年から毎日のように日本の安保法案に関する報道を続けていた。9月3日の抗日戦争勝利70周年記念式典が近づくと、さすがに式典と抗日戦争もの一色で塗りつぶされたが、それが過ぎるとまた安保法案を報道するようになっている。中国政府の通信社である新華網や中国共産党の機関紙のウェブサイトである人民網、あるいはその傘下の環球網なども歩調を合わせている。

 それらを総合すると、以下のような論調が目立つ。

■安倍内閣は軍国主義国家に戻ろうとしている。

■アメリカの軍事予算が減り、アメリカ国民が戦争に対して「これ以上犠牲になるのはごめんだ」という嫌悪感が強まっているので、選挙の際の国民の人気を気にしてアメリカの負担を軽減しようとしている。そのため日本にアメリカの肩代わりをさせようとしている。安倍(首相)はアメリカの望むように動こうとしてい

■安保法案には日本国内的な緊急性がないが、アメリカの要望に応えるという意味の緊急性がある。

■日本はそれにより、これまでの平和憲法を破棄し、またもや戦争への道を歩もうとしている。

■日本の国民は賢明で、安倍がいかに間違った道を歩もうとしているかを見抜いていて、激しい抗議運動が起きている。

■特に、これまで政治に無関心だった日本の若者が、安保法案をきっかけに政治に目覚め、中には若いママさんグループが、自分の子供の未来を心配して、政治のために立ちあがるようになった。

香港の「鳳凰網」の討論番組

 今年の5月14日、日本は臨時内閣会議を開き、安全保障法制の関連法案を閣議決定した。決定されたのは、新法の「国際平和支援法案」と、自衛隊法を含む10本の既存の法律の改正を一括して一つの法案にまとめた「平和安全法制整備法案」だ。法案は、集団的自衛権の行使について、「存立危機事態法」を設け、「わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃により、わが国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」際には自衛隊が防衛出動し、武力を行使することが可能であるとした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中