最新記事

ペット

韓国が輸出する超小型犬の悲劇

2014年8月6日(水)12時01分
ジェフリー・ケイン

通常の犬より弱い抵抗力

 ジャオはチビターノに、子犬を販売したアメリカの業者についてネットで調べてみるよう助言。するとこの業者は、多くの飼い主から苦情を受けていることが分かった。

 韓国生まれのティンカーベルを売ったのは、テキサスを拠点に販売会社を経営するアシュリー・アンダーソン。彼女は取材に答え、獣医師の正式な診断書を添えて苦情が届いたことは一度もない、と主張した。チビターノから連絡があったのも、同社の保証期間である48時間を過ぎてからだったと言い張る。

 アメリカの多くの州は州境を越えてペットを販売する場合に健康証明書を用意するよう義務付けているが、アンダーソンは輸入後のティンカーベルを診察した医師の名前を明らかにしようとしなかった。

 ティーカップ犬ビジネスは、透明性とは程遠い。あまりに多くの子犬が劣悪な環境の檻に押し込められ、長旅に耐えられないほど幼いうちに輸出されている。そのため取引を問題視すべきだと、動物保護団体に加えて韓国のブリーダーも訴えている。

 体が極めて小さいだけに、ティーカップ犬は通常の犬よりも低血糖などの深刻な症状に陥りやすく、ストレスや非衛生的な環境で命を落としやすい。

「生産性を最大限に向上させるため、子犬は早いうちに母犬から乳離れさせられる。これが大きなストレスになることは周知の事実だ」と、ペンシルベニア大学獣医学校のジェームズ・サーぺル教授は言う。「他の子犬と一緒に大量に押し込められ、長い距離を移動することもストレスと感染症の危険を高める」

 韓国には劣悪な環境で子犬を大量生産する「パピーミル(子犬工場)」が林立していると、韓国動物権利擁護団体(KARA)のボラミ・セオは言う。KARAの試算では国内に最大3000〜4000のパピーミルが存在し、各施設が一度に100〜800匹を育てる。犬は家畜に分類されないため、公式の統計はない。

 韓国の多くのブリーダーは、施設の取材を拒否した。だが一般客を装ってソウル郊外の金浦にある巨大パピーミル施設を訪れて話を聞くと、ここのブリーダーはティーカップ犬の輸出はお断りだと言った。輸送中か到着後1カ月以内に約3分の1が死ぬ可能性が高いからだという。

 アンダーソンに子犬を販売したのは、韓国で「ビクトリーペット」を経営するジュン・ソクだ。彼が言うには、子犬がアメリカへの輸送の途中で死んでも同社に責任はない。「小さな犬にとって、長旅はただでさえストレスになるから」だという。空港への輸送から検疫まで含めて韓国から北米まで約20時間を要する旅は、2〜3歳の成犬でもきついという。

 彼はパピーミルから子犬を買うことは一切していない、と付け加えた。彼は自ら取引先のブリーダーを訪れ、施設の衛生状態を確認し、韓国の2人の獣医師と共に子犬の状態をチェックしているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

エジプト大統領、トランプ氏にイラン紛争停止訴え 原

ワールド

トルコ領空にイラン発射の弾道ミサイル、NATO迎撃

ワールド

サウジ紅海側ヤンブー港の原油輸出量、最大能力付近の

ビジネス

金融政策「良い位置」、イラン情勢の影響見極め可能=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 10
    イタリアに安定をもたらしたメローニが国民投票で敗…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中