最新記事

マレーシア航空

失踪機の大事な情報を公表しなかったタイ政府の言い分

タイ空軍のレーダーはMH370便の針路変更を10日前に捉えていた

2014年3月19日(水)14時58分
ジョシュ・ブアヒーズ

後手後手 各国間の連携がうまくいっていれば今頃は見つかっていたかも Nguyen Huy Kham-Reuters

 消息不明になっているマレーシア航空370便との通信が途絶えた数分後に、タイ空軍のレーダーが同機のものと思われる機影を捉えていたことが分かった。タイ政府が18日に発表した。

 タイ空軍のレーダーがとらえた機影がマレーシア航空370便かどうかはまだ定かではない。だが、そのレーダーに記録された飛行経路はマレーシア半島とマラッカ海峡上空を通過しており、針路を西方向に変えてインド洋に向かったといわれる現在の仮設と一致している。

 この新情報自体は、現在の捜索活動に大きな変更をおよぼすものではないが、これまでの捜索活動の大きな障害となってきた問題をあらためて浮き彫りにしたといえる。つまり、捜索に加わる国々がお互いにうまく協力できていないという点だ。

 タイ政府はなぜ人命に関わる情報を1週間以上も明かさなかったのか。AP通信の記事を要約すれば、理屈のとおらないその言い分はこうだ。「誰にも聞かれなかったから」

 ちなみにAPの記事は以下のとおり。


 なぜもっと早く情報を公開しなかったのかと問われた空軍の司令官は、「タイ空軍はわが国への脅威に対してのみ対応する。そのためわれわれへの脅威と思われない事象については、何の行動も起こさない」と語った。

 問題のマレーシア航空機はタイ領空に入ってこなかったし、マレーシア政府が捜索開始直後に情報を求めてきたときは、具体性に欠けていたと、この司令官は言う。「彼らが再び情報を求めてきたときは、マレーシア首相から(西に針路変更した可能性があるとの)新しい仮設を伝えられたので、われわれは手元にある情報を見直した」


 マレーシア当局は同機が方向転換してマラッカ海峡に向かった可能性を認めるまでに1週間を要したが、これは自分たちのレーダーだけでは確信が持てなかったからだろう。もっと早くにタイ空軍の情報が共有されていれば、状況は違っていたはずだ。南シナ海で行われていた捜索活動を、マラッカ海峡やインド洋、さらにその先まで拡大することになった、極めて重要な情報だったのだが。

© 2014, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中