最新記事

暴力

惨殺されるアフガン少女たち

男性の気に障っただけで簡単に殺されても、加害者に罪を償わせる文化もない

2013年1月11日(金)19時46分
サミ・ユサフザイ(イスラマバード)
ロン・モロー(イスラマバード支局長)

ホラー アフガン女性の生活は向上していない(ジャララバードのテントの教室で学ぶ少女たち) Parwiz-Reuters

 アフガニスタン北部クンドゥズ州で先月末、14歳の少女ガスティナが喉をかき切られ、頭部を切り落とされて殺された。犯人はある2人の兄弟。1人が彼女との結婚を執拗に申し込んだが、娘はまだ若過ぎると父親が断っていた。兄弟は逃走したが拘束され、自宅から凶器の狩猟ナイフが押収された。だが起訴されるかはまだ分からない。

 不幸にもこうした惨劇は、アフガニスタンの保守的な地方で珍しい話ではない。少女が「家族の名誉」を汚したと鼻や耳をそぎ落とされたり、強制結婚を拒んで若い女性が建物から飛び降りたり殺鼠剤を飲んだりして自殺を図る事件も増えている。

 クンドゥズで女性問題に取り組むナディア・グヤによれば、昨年は少女への暴力事件が6件だったが、今年は8カ月間で既に11件も報告されているという。同州西部チャルダラで少女の遺体が発見されたが、1週間以上も引き取り手が現れなかった事件もあった。「背景に家族の名誉の問題があったに違いない」と、グヤは指摘する。女の子を産んだために夫に殺された女性もいるという。

「今年は女性を標的にした残虐行為が増えている。私たちの社会が抱える文化的な問題だ」とグヤは言う。「このようなおぞましい犯罪を犯した者は死刑にすべきだと訴えている」

 しかし多くの場合、犯人は無罪放免になるか軽い刑で済まされているのが現状だ。

 アフガニスタンのある元テレビキャスターは03年にタリバンに夫を殺害され、子供6人と共に残された。夫の家族は夫の兄弟と再婚するよう迫った。拒んだ彼女は命の危険を感じて子供を連れてパキスタンに脱出。「多くのアフガン女性のように貧しくて教育を受けていなかったら、無理強いされるか動物のように殺されていた」と語る。

「国際社会はアフガン女性の生活は向上していると言うが、それは幻想」と彼女は言う。「この国の男性の女性に対する考え方は何世紀も変わらない。ガスティナの死は厳しい現実だ」

[2012年12月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 6
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中