最新記事

アジア

台湾経済を支える出稼ぎ労働者の悲哀

アップル製品などの委託生産で急成長する台湾にはびこる外国人差別

2012年7月13日(金)14時27分
ケイン・ナンズ

繁栄の陰に 待遇改善を求める出稼ぎ労働者(昨年12月、台北) Sheng-fa Lin-Reuters

 昨年11月、アメリカ駐在の台湾人女性外交官がフィリピン人家政婦に対する詐欺容疑でFBIに逮捕され、起訴された。伝えられるところでは、家政婦2人は契約と違って週6日、1日18時間働かされていた。監視カメラで監視され、賃金から住居費などを差し引かれ、不満を言えばフィリピンに送り返すと脅されていた。

 台湾国内では出稼ぎ労働者へのこうした扱いは珍しくない。経済的成功の陰では「強制労働」が蔓延。米アップル製品を委託生産するフォックスコンなど、労働者搾取で国際社会の非難を浴びる企業も出てきた。それでも外国人労働者は製造部門を中心に増え、昨年末に42万5660人に達したと、台湾の行政院労工委員会は報告している。

 米国務省の昨年度の人身売買報告書によれば、台湾は「性的目的の人身売買および強制労働の被害者が送られる地」だ。台湾の法律は強制労働を禁じているが、「無数の台湾人と16万人近い外国人労働者──出稼ぎ労働者の約半数」は適用外だ。

「台湾企業が基本的人権をひどく侵害していることをとても恥ずかしく思う」と、台湾の労働団体のトップは言う。「人種差別をしている自覚すらないが、貧しい国から出稼ぎに来た人々を見下す考え方がある」

 労工委の関係者によると、「規制緩和」が進めば家事・介護労働者がさらに3万3000人増える可能性がある。しかしこうした業種は労働基準法の適用外で、最低賃金を下回ることも多い。それが台湾の現状だ。

[2012年6月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中