最新記事

SNS

蔓延するフェイスブック中毒障害

SNS大国マレーシアで報告された驚きかつ深刻な「FAD」の症状とは

2012年4月23日(月)19時08分
ジャスティン・カルデロン

現代病 開けっ広げな国民性も重症化の一因に Bazuki Muhammad-Reuters

 SNSの世界的な普及で、人と人とのつながり方が変わった。何を「共有」し、「いいね」と思い、誰を「フォロー」しているか簡単に意見交換できるようになった。

 そこには落とし穴もある。知らないうちに個人情報が流出したり、噂話が個人攻撃に変わったりするのだ。アメリカの心理学者が「フェイスブック中毒障害(FAD)」と名付けたような、SNSのせいで社会生活に差し障りが出るケースもある。

 最近の調査によると、大学生のフェイスブック中毒はマレーシアに多く、特に女子学生で顕著だ。10年のデータでは、マレーシアはSNS上の平均友人数が世界一。SNS利用者の77%がフェイスブックを使っている。

 首都クアラルンプールで先月、FADに関する会議を開いたニバシニー・モハン医師は「ある患者はゲームに熱中するあまり仕事に支障を来した」と指摘する。浮気がばれて離婚に至った夫婦もいるという。

 FADは新しい現象で診断が難しく、深刻化する危険もある。「10代の多くがフェイスブックを自己表現に利用し、注目されることに酔っている」とモハンは言う。ある患者は「フェイスブック上の人格が本人より立派」と指摘されて鬱症状が悪化し、自殺まで考えるようになった。

 先月、フェイスブックにナジブ・ラザク首相を脅迫する書き込みをしたとして大学生2人が逮捕される事件も起きた。誰でも閲覧できるコメントはすぐに広まり、冗談が冗談で済まなくなると、この2人は思い知っただろう。

 それでも多くのマレーシア人がSNSでの議論を楽しんでいる。PRコンサルティング会社バーソン・マーステラによれば、同国のネットユーザーのうちグーグルのブログサービスを利用する割合は42・4%に上る。

 東南アジア最大のブログ広告会社ナフナングは、フェイスブックやツイッターの恩恵もあって急成長を遂げた。共同創設者ティモシー・ティアは「例えばオーストラリアではプライバシー意識が高く、個人的な書き込みはずっと少ない」と指摘する。「マレーシア人は一般に開けっぴろげで、個人的な内容が大半。プライバシーに限らず、何事にも無頓着だからだろう」

 SNSを使えば内気な人でも自己表現が可能だ。面と向かうよりオンラインでの交流が気楽という人も多いが、リスクが隠れていることをお忘れなく。

[2012年2月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ミネソタ州知事と協議 地裁は移民摘発停

ワールド

イスラエル、ガザ最後の人質の遺体収容 ラファ検問所

ワールド

EU、米メタに有害投稿対策強化促す 「ワッツアップ

ビジネス

USAレアアース株、一時26%上昇 米政府の16億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 7
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中