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アイスランドに接近する中国の思惑

2010年3月17日(水)14時45分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局)

 近年の中国は相手国の抱える問題には触れず、資金を黙って差し出す「小切手外交」の展開で話題になっている。これまでは主に天然資源豊かな途上国を相手にしていたが、ここにきて新たな受取人をヨーロッパに見つけたようだ。

 いま一番ご執心なのは、銀行の放漫経営のせいで破産寸前にあるアイスランド。目下、首都レイキャビクに巨大な中国大使館を建設中だ。アイスランドの投資担当当局によれば、中国からの問い合わせが急増しているという。

 中国の投資行動は長期的戦略に基づいているのが常だが、今回の狙いは何なのか。ストックホルム国際平和研究所の最新報告によれば、中国政府は地球温暖化で氷が解けて北極海に新たな航路が開通することを見越して動いている。航路ができれば、ヨーロッパや北米市場への航海時間を短縮できる。

 中国は既に北極圏の探査基地をノルウェーに設置しており、最新鋭の砕氷船の建造には3億ドルを投じる予定だ。

欧州諸国ともめている隙に

 商用船が一年中航行可能になった暁には、アイスランドは友好的かつ設備の整った中継地になるだろう。これはアイスランドにとっても望むところだ。グリムソン大統領は先日、北極海航路の中継基地としてのアイスランドの将来を語り、中国が興味を示している点にも触れた。

 折しもアイスランドと他のヨーロッパ諸国の関係が悪化。経営破綻したアイスランドの銀行にあったイギリスやオランダの顧客の50億ドルに上る預金を、公的資金で保護するかどうかでもめている。いっそアジアに新しい友人を見つけたほうがいいかもしれない。

[2010年3月24日号掲載]

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