最新記事

外交

日米関係の「危機」は大げさだ

2010年1月6日(水)17時59分
ジョシュ・ローギン

アメリカが譲歩する余地は十分にある

 興味深いことに、現行計画の履行を求めるアメリカの断固たる姿勢にも、譲歩の余地がないわけではない。「調整が必要なことはアメリカ側も以前から認識している」と、この高官は語り、安全保障や環境問題に関する調整を加えて日本政府が受け入れやすい代替案を提案しているとした。

 さらに、オバマ政権が鳩山に圧力をかけているという点については否定したが、民主党内の混乱と、立場を明確にしない鳩山の対応が事態を複雑にしていることは認めた。「鳩山がめざしているものを明確に伝えてくれていれば、対応はずっと容易だったはずだ」

 非営利の研究組織アジア・ポリシー・ポイントで責任者を務める日本研究者のミンディ・コトラーは、民主党に対する外圧は鳩山政権の足を引っ張り、日米関係の円滑化をいっそう困難にすると考えている。普天間問題は、日本社会の変化に応えようとするアメリカ側の意欲のバロメーターであり、新政権がアメリカに従来と違う対応を求めるのは当然だと、彼女は言う。

「もちろん、オバマ政権は裏切られたと感じているが、(自民党政権との)合意はもはや日本国民の意思を代弁していないとわかっている」と、コトラーは言う。「アメリカはこの問題をもう一度検討し直すべきかもしれない」

 高官によれば、オバマ政権もその点は理解しており、民主党が立場を表明するのに時間が必要なこともわかっているという。「いつまでに結論を出せという明確な期限はないが」と、この高官は言う。「長引くほど、解決は難しくなる」

Reprinted with permission from "The Cable", 06/01/2010. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:長期金利2.0%が視野、ターミナルレート

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ADBと世銀、新協調融資モデルで太平洋諸島プロジェ

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中