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米外交

イラン「核の罠」に落ちたオバマ

2009年9月29日(火)18時06分
ブレイク・ハウンシェル(フォーリン・ポリシー誌マネジングエディター)

軍事力に頼らずに解決できるか

 もっとも、イスラエルが空爆に踏み切らなくても、イラン問題はオバマにとって深刻な頭痛のタネになりつつある。

 イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は、中東における真の危機はヨルダン側西岸の入植問題でもパレスチナ人の貧困でもなくイランの核計画だと主張しているが、今回の一件でその主張に勢いがつく。オバマを弱腰で無力だと印象づけたい米政界のネオコンや共和党陣営にとっても追い風になるだろう。

 オバマはどう対処するのか。イランに武力攻撃を仕掛け、自らが掲げた中東和平の夢をぶち壊す? イランの核保有を容認して、核なき世界という政権の理想を反故にする? あるいは制裁を行って、イラン国民に民族間対立や貧困の苦しみを押し付ける?

 オバマは核施設問題を公にしたことで、本当にイランに圧力をかけたのだろうか。自力では実現不可能な成果を出すよう強大な圧力を受けるのは、むしろオバマではないだろうか。

 確かに、今回の一件でイランのマフムード・アハマディネジャド大統領が「嘘つき」だという印象を与えることはできた。だが、ホロコーストの存在を否定し、反体制派を見せしめ裁判にかけるアハマディネジャドが信頼できる相手でないことくらい、とうの昔に分かっている。

 軍事力に頼ることなく、外交で問題を解決する戦略があるのか。オバマは今、一段と厳しい立場に追いやられている。


Reprinted with permission from www.ForeignPolicy.com, 29/09/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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