最新記事

米大統領選

失速ヒラリーが乗り出す「私だって人間」作戦

本命のはずが支持率は下降気味。陣営はイメージチェンジによる人気再浮上を狙うが

2015年9月18日(金)18時00分
ジャック・マルティネス

笑いを取れ 人気トーク番組『エレンの部屋』では、流行中のダンスに挑戦 Lucas Jackson-REUTERS

 アメリカ人は人間味がある政治家が好きだ。バラク・オバマ米大統領が冗談を言うのも、そんな「国民性」があるからこそ。隙がないミット・ロムニーが12年大統領選でオバマに負けたのも、おそらくそのせいだ。

 次期大統領を目指して民主党候補指名を争うヒラリー・クリントンも、それを意識し始めたのだろう。ニューヨーク・タイムズ紙の記事によれば、クリントン陣営はイメージチェンジに踏み切るつもりらしい。

 先週掲載された記事のタイトルは「より開放的でユーモラスなヒラリー・クリントンに、と顧問は語る」。選挙参謀たちは彼女に、もっとソフトな一面を見せるよう求めているという。人間的で感情豊かな人物像を打ち出してイメージを刷新──記事で報じられている発言からは、そんな目標がうかがえる。

 この夏、クリントンはバッシングの的だった。原因は、国務長官時代に個人のメールサーバーとアドレスを公務に使用していた問題。おかげで信頼性に傷が付き、好感度は下がる一方だ。

 ニューヨーク・タイムズの電話インタビューに応じたクリントン陣営の広報責任者、ジェニファー・パルミエリは「大きな問題にも小さな問題にも取り組む」政治家としてアピールしたいと語っている。だが、具体的にどうしていくのかを語る言葉は記事にない(本誌は陣営関係者にコメントを求めたが、返答は得られなかった)。

 クリントンは今月16日、人気の深夜トーク番組『トゥナイト・ショー』に出演する。その数日前には、大統領選出馬を検討するジョー・バイデン副大統領も別の深夜番組に登場した。深夜トーク番組の活用は、今回の選挙戦の大きな特徴だ。

 この手のメディア戦略は、クリントンにとって見慣れたもの。92年大統領選で候補だった夫ビルは、ベトナム戦争の徴兵忌避疑惑や不倫疑惑が持ち上がると、当時の候補者としては珍しく朝の番組に出演。深夜のトーク番組でのサクソホン演奏も披露して有権者の心をつかみ、大統領選に勝利した。

メール問題では謝罪へ

 クリントンの戦略変更も夫の場合と似たようなものだ。ただしクリントンは既に何度か、イメージチェンジを試みている。今年に入ってから、記者らを招いてカジュアルな夕食会を開き、選挙運動中にファストフード店で食事をしたりもした。

 だが努力は功を奏しているように見えず、メール問題は膨れ上がるばかり。ニューヨーク・タイムズの記事によれば、面白くて温かみのある「普段のクリントン」を知ってもらう作戦に、陣営は期待をかけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの

ビジネス

クーグラー元FRB理事、辞任前に倫理規定に抵触する

ビジネス

米ヘッジファンド、7─9月期にマグニフィセント7へ

ワールド

アングル:気候変動で加速する浸食被害、バングラ住民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中