最新記事

米自動車

希望の見えたTPPだが大統領選で頓挫する?

中間選挙での共和党の勝利が追い風になりそうだが、16年の選挙では自動車産業に逆らえない

2014年11月21日(金)12時49分
ザカリー・ケック

敵にすれば負ける 自動車業界は議会に強い影響力を持つ(ミシガン州のフォード工場) Rebecca Cook-Reuters

 米中間選挙で共和党が上院でも過半数を獲得し、TPP(環太平洋経済連携協定)に追い風が吹き始めたようにも見える。しかし16年の大統領選をめぐるワシントンの動きが、最後にはTPPを頓挫させかねない。

 筆者は以前から、中間選挙で共和党が勝てばアジアとの関係強化につながる可能性があると考えていた。自由貿易協定を支持する傾向が強い共和党が議会を制すれば、オバマ大統領に交渉を一任する貿易促進権限(TPA)法案が成立し、TPPを批准する可能性が高くなる。

 事態はそのとおり進んでいるようだ。共和党が勝利を決めた後の記者会見で、上院多数党の院内総務となるミッチ・マコネル上院議員は、共和党とオバマ大統領は貿易協定について協力できると語った。オバマも記者会見で同様の感想を口にした。「輸出を増やし、新しい市場を開くために、(両党の)協力は可能だ」

 TPA法案については議会の反発が強い。TPAが成立すれば、議会はTPPの内容について修正を求めることができなくなり、「承認するか、しないか」の選択肢しかなくなるからだ。それでもマコネルをはじめ共和党幹部は、新たな自由貿易協定の成立を重視し、TPA成立に賛成の意向を示している。

 むしろTPP批准の大きな障害は合意内容そのものと、16年の大統領選に与える影響だ。中間選挙が終わった今、ワシントンの関心は次期大統領選に移っている。

 問題となるのは、米政界では日本が農業と自動車産業を保護するために、関税撤廃に強く抵抗しているとみられていることだ。自民党は、コメ、小麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5品目の関税維持を決議している。

 農業ロビーはアメリカでも議会への影響力が強い。既に多くの農業関係団体が、農産物の関税で日本の譲歩がない限り、TPP交渉から日本を外すよう要求している。特に自民党が保護しようとしている豚肉は、大統領選で接戦が予想されるアイオワ州やノースカロライナ州で生産されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価は再び安定、現在のインフレ率は需給反映せず=F

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 9
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中