最新記事

米外交

世界の脅威に策を持たないオバマの危険なミニマリズム

紛争で激しく揺れ動く世界とアメリカに必要なのは、自ら時代を形作ろうとする大統領だ

2014年9月11日(木)15時26分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)

戦略がない? オバマに求められるのは実行力と先見性だが Larry Downing-Reuters

 真夏のある夜、ローマ郊外に立つ15世紀の屋敷で知識人や建築家、経営者、科学者などを招いて夕食会が開かれた。芸術や建築、科学や文学といった高尚なテーマが語られ、その夜の主賓は遅くまで会話を楽しんだ。あまり社交的でないことで知られる彼にしては珍しい。

 主賓とは、イタリアを訪問していたバラク・オバマ米大統領。駐伊アメリカ大使主催の夕食会で、彼は知的世界に魅了されたと、アメリカの新聞は伝えた。
だがこの出来事は、オバマ政権に対する負の評価にもつながった。大統領は自国と世界が抱える地政学的リスクに真正面から取り組むより、知的な会話に浸るほうが好きなのではないか?国務省の元職員はこの夕食会について、「中東やウクライナのことを夜遅くまで話してほしかった」と嘆いていた。

 オバマは外交問題に関心がない、あるいは無能で優柔不断だという評価はワシントンの内外に根付いている。スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の台頭から、中国がけし掛ける南シナ海での領有権争い、ウクライナをめぐるロシアと欧米の対立といった複雑な外交問題に、オバマは一貫した姿勢を示していない。

 先頃オバマは、シリアでISISに対抗する「戦略はまだない」と発言して批判された。ISISの台頭は、昨日や今日始まったものではない。NBCニューズのリチャード・エンゲル記者は、米軍指導部はこの言葉に激怒したと伝えた。

 ISISがアメリカ人ジャーナリストを殺害し、2人目の殺害予告をして(そのとおり実行した)、地域の同盟国の脅威となっているときに大統領が「戦略はない」と公言するのは広報のミスか、外交政策の失敗か、あるいはその両方だろう。

自由世界の将来を左右

 オバマは休暇中、ジャーナリストのジェームス・フォーリー殺害に対する非難声明を出してからすぐにゴルフコースに向かい、批判された。ゴルフ場で大笑いする写真のオバマは、実行犯がイギリス人である可能性が浮上して休暇を切り上げたデービッド・キャメロン英首相とはまったく対照的だった。あの写真はアメリカ人に向かって、自分にはテロリストに惨殺された若いアメリカ人よりゴルフのほうが大事だと言っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-リクルートHD、今期の純利益予想を上方修正 

ビジネス

スクエニHD、純利益予想を下方修正 118億円の組

ビジネス

独コメルツ銀、第3四半期は予想に反して7.9%最終

ビジネス

グーグル、ドイツで過去最大の投資発表へ=経済紙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中