最新記事

テクノロジー

噂のハッカー集団、アップルを試し撃ち?

ソニーやCIAを震撼させた国際的なハッカー組織が、万全のセキュリティを誇るアップルに掛けた「小規模」攻撃の真意とは

2011年7月5日(火)18時04分

鉄壁 iCloud発表から間もない攻撃のタイミングには不安もよぎったが(6月6日) Beck Diefenbach-Reuters

 7月3日、ハッカー集団が「アンタイ・セク(反セキュリティーの略語)」と称したサイバー攻撃をアップル社に仕掛け、サーバーから盗んだ個人情報をネット上に公開してみせた。世界各国で相次ぐ政府機関や企業を狙ったサイバー攻撃が、ついにIT業界の頂点に君臨するアップルにも及んだわけだ。

 犯行を行ったのは、各国の政府関連サイトを狙う国際ハッカー組織「アノニマス」と、ソニーやCIA(米中央情報局)を攻撃し、先月突然に解散を発表した「ラルス・セキュリティー」という2つのハッカー集団。彼らはアップルの社内関係者のユーザー名とパスワードや、同社のサーバへのリンクを含む文書などもネット上に流出させた。

 狙われたのは、アップルの顧客情報ではなく、同社がオンライン調査用に使っているサイト。攻撃を受けた翌日、このサイトにアクセスするとエラーメッセージが表示され、接続できない状態となった(アップルの広報担当者はコメントを拒否した)。

 流出した情報は、アップルの音楽配信サービス「iTunes」が保有する2億人以上のクレジットカード情報につながるものではなかった。同社が推進するクラウド・コンピューティングのiCloudとも連動していない。それでも今回の攻撃は、ラルズ・セキュリティーの解散発表後も大企業を狙ったサイバー攻撃が続くことを示していると、英フィナンシャル・タイムズ紙は指摘する。

「他で忙しいから心配するな」のメッセージ

 アノニマスは盗んだ情報をテキスト共有サービス「ペーストビン・ドットコム」に公開した上、そのリンクをツイッターに流し、次のようにつぶやいた。「大して本気ではなくとも、アップルも標的になり得るということだ。だが心配するな。我々はもっと他のことで忙しい」

 アップルに関する噂をまとめたサイト「9to5マック」では、今回の情報漏えいは大した被害ではないという見方が一般的だ。だが、今回の攻撃は今後に向けた「警告」だという見方もできる。

 ハッカー集団は「他で忙しい」ため、今のところアップルに厄介なトラブルをもたらす意図はないというが、だからといって今後もずっと安心とは限らない。ツイッターの文面には、アップルがハッカーを苛立たせる行動に出れば、より大規模な攻撃を仕掛けるというメッセージが込められていると、ニュースサイト「ZDネット」は指摘する。


 アップルが何らかのきっかけを提供すれば、同社は今後ますますハッカーの標的とされるだろう。iTunesの顧客情報を持っている同社は、悪意に満ちたハッカーにとって格好の標的だ。アップルが大規模なハッカー攻撃を受ければ、ソニーやAT&T、CIAへの攻撃とは比べ物にもならない大ニュースになるだろう。


 もっともフォーチュン誌は、サイバー攻撃がアップルにとって深刻な脅威となるという説を一蹴している。


 スティーブ・ジョブズがiCloud計画を発表してから1カ月も経たない中でのサイバー攻撃の報道は、確かに不安を掻き立てた。(中略)だがiTunesのデータベースのセキュリティーは、アノニマスやラルズ・セキュリティーの侵入を許したソニーやCIAとは比べ物にならないほど鉄壁だ。

 立ち上げから8年経った今も、iTunesやアップル・ストアがハッキング被害を受けたという確たる情報はない。先週末の騒ぎも、被害からは程遠いレベルだった。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾、25年GDP予測を上方修正 ハイテク輸出好調

ワールド

香港GDP、第2四半期は前年比+3.1% 通年予測

ワールド

インドネシア大統領、26年予算提出 3年以内の財政

ワールド

米政権、年間の難民受け入れ上限4万人に 南アの白人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化してしまった女性「衝撃の写真」にSNS爆笑「伝説級の事故」
  • 4
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 5
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 6
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 8
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中