最新記事

アメリカ政治

イギリスに学べ「超高速で新政権」

2010年5月18日(火)17時27分
アキル・リード・アマール

 100年近く前、ウッドロー・ウィルソン大統領はイギリス流の政権移行に近い方法を考案した。再選をめざした1916年の大統領選でウィルソンは、共和党候補のチャールズ・エバンズ・ヒューズに敗れた場合はすぐに辞任すると決意。その場合、当時の制度では副大統領に次ぐ大統領継承順位にあった国務長官にヒューズを指名する心積もりだった。ヒューズの国務長官就任後にウィルソンとトーマス・マーシャル副大統領が辞任すれば、ヒューズは3月の正式就任を待たずして暫定大統領になれる。

 実際には、ウィルソンは再選され、退陣計画が現実になることはなかった。だが、オバマとバイデンがウィルソンの計画を復活させれば、未来の大統領たちも前例にならって迅速に退陣しなければならないという道義的制約を感じるかもしれない。

 この新方式の推進力になるのは、法律ではなく慣習だ。選挙で敗れた大統領と副大統領は辞任を選ぶようになる。選挙で敗れた議員らも同様に、法律で定められた期限より前に辞任する道を選ぶだろう。

 事情はイギリスでも同じだ。政敵である保守党の連立政権樹立が明らかになった直後にブラウンが辞任を余儀なくされたのは、長年の慣習のためだった。

 米大統領選を12月下旬に行う選択肢もあるが、一般投票日や選挙人投票日に事故が起きた場合に日程的な余裕がなくなるというリスクがある。

 アメリカ人が心の底から迅速な政権移行を望むなら、憲法はその妨げにはならない。だとすると、問題は、イギリスの真似ができるかではなく、真似をしたいかどうかということだ。

*Slate特約
http://www.slate.com/

[5月19日発売のニューズウィーク日本版はキャメロン新英首相の特集を掲載しています]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBは当面政策維持を、生産性頼みは尚早=カンザス

ワールド

米雇用統計「素晴らしい」、米は借入コスト減らすべき

ワールド

米が制限順守ならロシアも同調、新START失効でラ

ビジネス

1月米雇用、13万人増と1年超ぶり大幅増 失業率4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中