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アメリカ経済

中流階級を破壊したアメリカの暗い未来

全予算を傾けても足りない中流再興にアメリカの盛衰がかかっているというのに、聞こえてくるのは財政赤字を非難する愚かな声ばかり

2010年2月2日(火)18時22分
マイケル・ハーシュ(ワシントン支局)

虚構のツケ 中流階級の経済基盤を破壊し借金中毒にさせた末の金融危機(写真は09年10月、ワシントン) Jim Bourg-Reuters

 財政赤字の問題はひとまず脇へ置こう。共和党は不服だろうが、バラク・オバマ大統領に共和党政権「放蕩の10年」を批判された後では、彼らがどんな赤字批判をしてもあまり説得力はない。財政赤字は確かに持続不可能な規模に膨張しているが、深刻な景気後退のなかで編成する11年度(10年10月〜11年9月)予算で打てる手はほとんどない。

 より根本的な問題は、11年度とそれ以降の予算で、アメリカの中流階級を再興できるかどうかということだ。いやその前に、果たして今のアメリカにまだ中流階級が残っているのかどうかを問うほうが先だろう。

 近年私たちが中流階級と思っていた存在は、ほとんど錯覚だったことが明らかになった。米政府が作り出し、家計の膨大な借金によって支えられてきた幻想だ。クレジット・カード、住宅ローンの借り換え、所得証明もいらない融資──すべては、風と共に去った。残ったのは、資産より大きな負債をかかえているか毎月食いつなぐのがやっとの階級だ。もし新たな中流階級を作り出せなければ、アメリカがこの財政赤字を克服し危機から脱出できる見込みはない。

 オバマは1日の予算教書演説で、必要な処方箋を次々と繰り出した。中小企業向けの追加減税。中小企業がすぐに投資を行うよう促す税制優遇。子育て支援を目的とした中流階級向けの減税は規模を倍増させた。教育予算は6%増。「世界トップ水準の教育ほど優れた貧困対策はない」からだ、とオバマは言った。

 だがこれらすべてを束にしても、諺に言う「千里の道の一歩」にすぎない。アメリカの所得格差は先進国で最大であるばかりでなく、過去30年間の格差拡大幅も先進国最大だ。つまり、アメリカでは中流階級が徐々に消滅させられていったということだ。ここ数カ月でウォール街の高額報酬に対する世論の怒りが再燃したのも、この国で本当に起こったことの上っ面の現象でしかない。

「最後の消費者」という虚構を守るため

 この大惨事をもたらしたのは、一世代以上にわたって民主党と共和党が犯し続けた失政だ。サプライサイドの経済学が幅を利かせたロナルド・レーガンの時代には、労働組合に敵対的な政策と規制緩和が熱病のように広がった。ビル・クリントンは中流層減税の公約を反故にし、8年の在任期間中ほぼ一貫して債券市場を優遇し、国際金融市場の規制緩和を推進した。ジョージ・W・ブッシュ前大統領は財政的に無責任で、富裕層には免税にも等しいような減税をした。レーガン以降の政権はくる年もくる年もアメリカの中流階級を痛めつけ、ほぼ完全に破壊した。

 オバマ政権はジョージ・W・ブッシュにほとんどの責任があると非難している。だが、中流階級が忘れられた存在になったのは、ブッシュよりはるかに以前からのことだ。民主党のクリントン政権も共和党のレーガン政権と同じだった。国際金融市場の乱高下についてできることは何もなく、最終的には市場が自らを修正すると単純に決めつけ、ブッシュに負けないくらい市場を野放しにした。

 かつて製造業で生計を立てていた中流階級は経済基盤を失って、それまでの生活水準を維持するために彼らにできる唯一の手段に訴えた。借金だ。

 米政府は中流階級に借金を奨励した。アメリカ人の消費で稼いでいた世界の他の国もそれを歓迎した。アメリカは世界の「最後の消費者」であり続けられるふりをしようとした。本当はアメリカ人にもアメリカにもそんな力は残っていなかったのに。日本や中国などの新興国は次々に、アメリカの消費で豊かになった。米政府も調子を合わせた。いつか市場がすべてを解決してくれるだろうと考えて。

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