最新記事
考古学

「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭蓋骨から何が分かった?

Discovery of Million-Year-Old Skull ‘Totally Changes’ Human Evolution Story

2025年10月1日(水)18時35分
ジャスミン・ローズ

今までの常識が覆らずとも、研究自体に価値あり

一方、現生人類の起源についてはさらなる研究が必要だ。すべての専門家がこの発見によって既存の知見が大きく変わると考えているわけではない。

ニューヨーク大学のスーザン・C・アントン教授(人類学)は本誌に、「今回の研究で脳容量の増大が始まった時期に対する理解が大きく変わるとは思えない」と述べた。

「鄖県2は他の研究でも異なる手法で再構築が試みられ、いくつかの異なる結果が出ている」


一方、「今回の研究の重要性は、3Dスキャンを用いて復元を行い、その上で他の化石との比較を行った点にある。最近分析されたばかりのデニソワ人の化石、特にハルビンおよび澎湖の標本を比較対象にしたことも大きい。デニソワ人の系統は、特にアジアにおける化石種に関する新たな理解と視点を提供してくれる」と、今回の研究に対して一定の評価をした。

ジョージ・ワシントン大学で人類の起源を研究するバーナード・ウッド教授も本誌に、「これほど古い時代に大きな脳容量を持つ個体が存在していたことは、驚くべきことではない。ただ、この証拠に価値があることは間違いない」と語っている。

プリンストン大学のルイス・シグラー統合ゲノム研究所のジョシュア・エイキー教授は本誌に「現在、人類の系統は1つだけだ。しかし、長い歴史の中で現生人類は多くの異なる人類グループとこの惑星を共有してきた。これらの異なる系統が互いにどのような関係にあったのか、いつ出現したのか、そして何が現生人類とそれ以前の人類を区別するのかといった点には、未だ多くの疑問が存在する」と語った。

「これほど古い時代にまで人類系統の分岐がさかのぼるのは非常に興味深く、挑戦的な見解といえる。この見解は最近の遺伝学研究とも一部一致している。初期の人類グループがこれまで考えられていたよりもはるかに長く存在していたことを示唆している」

現生人類はいつ生まれたのか。どのように姉妹種と共存してきたのか。今後の検証や研究で明らかになることが期待されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、予想外の3.2万人減 23年以来

ワールド

ハマス、米調停案の検討3日目に 赤十字がガザでの活

ワールド

EU首脳「ドローンの壁」協議、ロシアの領空侵犯に対

ビジネス

9月米ISM製造業景気指数は49.1、7カ月連続で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 3
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引き締まった二の腕を手に入れる方法
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かっ…
  • 8
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 9
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 10
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 4
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 7
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 8
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中