トランプやマスクが目指す「人類の火星到達」の本当の実現度...彼らが見落とす宇宙旅行の「現実」とは?
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しかし、数十年がたった今も具体的なタイムラインは見えていない。人類はいつ火星に到達するのだろうか。その質問には答えられないと、ホフマンは言う。「アポロ計画には、それを可能にした地政学的な環境があった。非常に特別な時代だった。冷戦があった。大統領が火星に行きたいと言うだけでは(議会の支持は)得られない。政府予算の削減に躍起になっている今、それでも火星に行こうとするだろうか」
一方でホフマンは、火星を研究拠点として確立することの重要性を強調する。「火星は実に魅力的な惑星だ。初期の火星は、初期の地球にとても似ていたようだ。地表には大量の水が存在し、大気の状態も地球に似ていたと考えられている。火星には生命の維持に必要な要素がそろっており、将来、人類が暮らすことができるかもしれない」
夢を見ることに限界はない
火星に宇宙飛行士を送ることにより、約45億年前の誕生の過程を含めて、この惑星に関する理解は飛躍的に深まるだろう。とはいえ、地球からの大規模な移住がすぐに実現する可能性は低いと、フランクリン・インスティテュートのピッツは言う。「夢のあるロマンチックな話だが、現時点の技術では不可能だ」
アフリカ系アメリカ人として初めて宇宙遊泳をした元宇宙飛行士のバーナード・ハリスは、火星到達は時間の問題だと考えている。27年頃に予定されているアルテミス3(スターシップを使って有人月面着陸を行い、月の南極付近を探査するミッション)が成功したら、NASAの最新のスケジュールによると、早ければ35年にも有人火星探査ミッションへと進む計画だ。