トランプやマスクが目指す「人類の火星到達」の本当の実現度...彼らが見落とす宇宙旅行の「現実」とは?

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2025年5月15日(木)17時10分
ジョシュア・レット・ミラー(本誌調査報道担当)

火星に到着した乗組員は大気中の二酸化炭素を電気分解して酸素原子を分離し、酸素を生成すると考えられている。

地球に帰るには推進剤の製造という重要な作業があり、これには25〜30キロワットという大量の電力を使う。おそらく原子力発電所が必要になると、ホフマンはみる。


「月面にも火星の表面にも、まだ原子炉はない。NASAは目下原子炉の開発に取り組んでいる。というのもよその惑星で暮らすには、酸素を生成するなどして居住環境を維持するのに30〜40キロワットの電力供給が必要になるからだ。だが今現在、電力は供給できない。これは大問題だ」

火星に星条旗を立て「さらに遠く」へ行くというトランプの宣言は現実的ではないと、ホフマンは言う。「有人月面探査を再開するだけでも、NASAは非常に苦心している。火星探査を慎重に進めるのは正しいやり方だと思う。今はテストしなければならない新しいテクノロジーや手順が非常に多く、私としては火星に人間を送り出す前に、有人月面探査の成功を見届けたい」

ジョージ・ブッシュ大統領(当時)が有人火星探査の構想を明らかにしたのは、1989年のことだった。アポロ11号の月面着陸20周年を記念するスピーチで宇宙ステーションの建設と有人月面探査の再開を呼びかけ、最終的には火星への「有人ミッション」を実現したいと述べた。

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