トランプやマスクが目指す「人類の火星到達」の本当の実現度...彼らが見落とす宇宙旅行の「現実」とは?

ALL SYSTEMS GO

2025年5月15日(木)17時10分
ジョシュア・レット・ミラー(本誌調査報道担当)

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帰還したクルードラゴン NASA/KEEGAN BARBER

NASAで5回のミッションに参加し延べ1200時間以上宇宙に滞在した元宇宙飛行士のジェフリー・ホフマンは、スターシップはいずれ火星への往復飛行を成功させると考える。だが順調にはいかないだろう。「スペースXは最終的に必ず目標を達成するが、当初の予定どおりに何かを成し遂げたことは一度もない」と、彼は指摘する。

宇宙では不測の事態が生じるとホフマンは言い、2030年で運用が終了するISSを引き合いに出す。


「宇宙ステーションで何かが故障した場合、地球から部品を届けるのは不可能ではない。だが火星に向けて旅立ったら最後、誰も助けてはくれない。だからシステム全般の信頼性を、現在よりもはるかに高い水準に引き上げなければならない」

スターシップが火星への初飛行に挑むときには緊急時の避難所として予備の宇宙船を同時に打ち上げるのも手だと、ホフマンは述べる。

「スペアの部品を大量に積み込むことはできない。1キロの荷物を火星に届けるには、15キロの燃料や機材を地球軌道に乗せなければならない。宇宙では質量が絶対的に重要だ」

宇宙飛行士が火星に長期滞在する可能性を考え、NASAは現在、健康を維持するための運動器具の開発に取り組んでいる。これも火星探査の課題だと、ホフマンは言う。

「火星探査には運動不足の問題があり、システムの信頼性の問題があり、もちろん放射線被曝の問題も忘れてはならない。放射線被曝の問題は、率直に言って未解決だ。もっとも火星に行く途中で巨大な太陽フレアが発生しない限り、おそらく乗組員は持ちこたえられるだろう」

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