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実は別種だった...ユカタンで見つかった「新種ワニ」が常識を覆す

Biologists Reveal Two New Crocodile Species: 'Totally Unexpected'

2025年5月12日(月)16時40分
メリッサ・フルール・アフシャー

DNA配列の解読と解剖学的解析をもとにした今回の研究結果は、これまでの分類法に異議を唱えるものだ。そして、へき地の熱帯生態系における生物多様性については、解明がまだほとんど進んでいないことを浮き彫りにした。

今回の研究は、ワニを捕獲して無事に生息地に解放するという現地での努力によって実現した。遺伝子解析のために、捕獲されたワニの血液とうろこのサンプルが採取された。

アビラ=セルバンテス氏がマギル大学でゲノムを解読した結果、コスメル島とバンコチンチョロに生息するそれぞれの個体群は、本土に生息する個体群と大きく違うことが明らかになった。さらに、大学院生のホアイ=ナム・ブイ氏が頭蓋形態を調査したところ、これらの個体群は別個の進化系統に属するという結論がいっそう裏付けられた。

新たに発見された2種類のワニは、生息状態が安定していると見られるが、その個体群は規模が小さく、繁殖が可能な個体数はそれぞれ1000匹に満たない。

生息地が限られていることと、個体数が少ないことから、それらのワニはとりわけ、環境のかく乱や生息地の喪失、気候変動の影響を受けやすくなっている。

今回の発見で浮き彫りになったのは、局所的に保護活動を行うことの重要性だ。見過ごされがちな地域であれば、その重要性はさらに増す。科学者たちは現在、これらのワニを別個の種として正式に認めるよう求めている。実現すれば、メキシコ国内でも国際的にも、対象を絞り込んだ保護活動が可能となるだろう。

(翻訳:ガリレオ) 

【参考文献】
Avila-Cervantes, J., Charruau, P., Cedeño-Vázquez, J. R., Bui, H.-N., Venegas-Anaya, M., Vargas, M., López-Luna, M. A., González-Cortés, H., Macías-Díaz, D. A., Pérez-Flores, J. S., Barrios-Quiroz, G., Salazar, J. M., McMillan, W. O., & Larsson, H. C. E. (2025). Novel island species elucidate a species complex of Neotropical crocodiles. Molecular Phylogenetics and Evolution, 207.

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