情報BOX:米国防権限法成立へ、ウクライナ支援や中国対策など
写真はワシントンの米連邦議会議事堂。2024年7月撮影。REUTERS/Kevin Mohatt
Patricia Zengerle
[17日 ロイター] - 米議会上院は17日に2026年度国防権限法(NDAA)修正法案を可決した。同法案は先週既に下院を通過しており、トランプ大統領の署名を経て成立する見通しだ。
NDAAは毎年制定されるため、議会は兵士の給与引き上げから中国やロシアへの対抗策、主要武器開発までさまざまな取り組みを盛り込める法令として活用。ロッキード・マーチンやRTX など国防総省と取引する防衛企業の注目度も高い。
今回の主な内容は次の通り。
◎欧州支援
トランプ氏が今月公表した最新の国家安全保障戦略はロシア寄りの姿勢がにじみ、米国が欧州との関係を見直す構えだと受け止められている。しかしNDAAには、欧州の安全保障を強化する幾つかの条項が盛り込まれた。
ウクライナの安全保障支援としては向こう2年で8億ドルが計上され、米企業がウクライナ軍に納入する武器の代金を支払う。ラトビア、リトアニア、エストニアのバルト3国の防衛を支えるためには1億7500万ドルが振り向けられる。
在欧州の米軍部隊規模を国防総省が7万6000人未満に縮小するのを制限し、米欧州軍司令官が北大西洋条約機構(NATO)最高司令官の肩書きを放棄するのは禁じた。
◎中国への対抗策
NDAAは中国向け投資を審査するプロセスを設け、米国人や米企業が中国で重要な技術に投資する際には財務省に通知することを義務化。財務省はそうした取引を阻止する権限が強化される。
中国のバイオテクノロジー企業が米連邦政府の補助金を受け取ることも禁じる。
また中国による台湾侵攻懸念がある中で、10億ドルの台湾安全協力イニシアチブが設定され、米軍による台湾軍の訓練費用や、無人機・対無人機システムの共同開発・配備プログラムなどに資金が拠出される。
フィリピン向けには15億ドルの新たな安全保障支援措置が承認されたほか、在韓米軍についてトランプ氏が縮小できる権限を制限した。
◎中東関連
イスラエルに対しては「アイアンドーム」や「ダビデスリング」といった共同開発ミサイル防衛システムへの全面的な資金拠出など幾つかの広範な支援措置が打ち出された。
パレスチナ自治区ガザでの戦争を巡るイスラエルへの国際的な武器禁輸措置の継続的な評価や、米国がイスラエルの武器生産ニーズをカバーできるかどうかの検討も義務付けた。
シリアの旧アサド政権下に科した厳格な制裁「シーザー法」は撤廃。これはシリアの経済復興に向けた重要な一歩と目されている。
1991年と2002年のイラクに対する武力行使を認める権限(AUMF)は廃止され、戦闘地域に米軍部隊を派遣するかどうかについて議会の決定権を取り戻そうとしている。
議会では長年、大統領にこうした部隊派遣権限をあまりに大きく認め過ぎたとの意見が広がっていた。
トランプ氏は第1期の大統領時代、20年のイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害について法的な根拠として02年のAUMFを持ち出した。
◎兵士の待遇改善や「文化戦争」
NDAAには、米軍兵士の給与の4%引き上げ、子育てや住宅の環境改善への取り組み強化が含まれている。
右派政治家が支持する「文化戦争」に関する条項も幾つか盛り込まれた。例えば米国の軍事学校で女性向けと指定された運動プログラムへのトランスジェンダー女性の参加は禁止された。ただ国防総省によるジェンダー関連の医療処置への資金提供禁止は入っていない。軍人家族向けの体外受精治療の補償拡大や、国防総省を戦争省に改称するトランプ氏の計画向けの資金(推定費用20億ドル)も含まれなかった。





