最新記事

5Gの世界

5G戦争:ファーウェイ追放で得をするのは誰か?

WHO’S THE WINNER?

2019年3月20日(水)11時35分
イライアス・グロル(フォーリン・ポリシー誌記者)

RAFAEL MARCHANTE-REUTERS

<5Gをめぐる米政府のファーウェイ締め出しにヨーロッパも追随。それにより得をするのは、エリクソンやノキア――ではないかもしれない>

※3月26日号(3月19日発売)は「5Gの世界」特集。情報量1000倍、速度は100倍――。5Gがもたらす「第4次産業革命」の衝撃。経済・暮らし・医療・交通はこう変わる! ネット利用が快適になるどころではない5Gの潜在力と、それにより激変する世界の未来像を、山田敏弘氏(国際ジャーナリスト、MIT元安全保障フェロー)が描き出す。

◇ ◇ ◇

華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)がアメリカから追放されて、得をするのはどの企業なのか。5G(第5世代移動通信システム)を製造するファーウェイは中国政府の補助金の助けもあり、世界市場の28%を占めている。

米政府はファーウェイ製品がスパイ行為に利用される恐れがあるとして、政府機関やその契約企業のファーウェイ製品使用をほぼ全面的に禁止にした。ヨーロッパでもそれに続く動きがある。

このことは北欧の大手エリクソンとノキアにとって大きな追い風になるのか。エリクソンは5G市場で13%、ノキアは17%のシェアを持っている。だが、今後の成り行きはそれほど楽観視できない。

アメリカがファーウェイを締め出せば、エリクソンやノキアを含む外国企業が中国市場に入れなくなる可能性がある。「中国は欧米企業に報復するだろう」と、テレコム業界のコンサルティング企業シグナルズリサーチグループのマイク・セランダーは言う。

となると、得をするのは韓国のサムスンではないか。5G市場では新参者だが、スマートフォン製造で世界をリードし、5Gの重要部品である先進型チップセットを作ることができる。

「政府がファーウェイ製品の使用を禁じた場合、契約企業はそれ以外の選択肢を自由に考えられる」と、セランダーは言う。「それなら、サムスンにしようと思うかもしれない」

途上国はやはりファーウェイ

5G製品は登場したばかりだが、通信網の未来を左右するこの技術に多額の投資を検討している国は多い。4Gへの移行で「アプリ経済」がもたらされたように、5Gも大きなイノベーションをもたらすだろう。

しかし今のアメリカ政府の動きは、5G技術インフラをめぐる各国の決定に、政治およびセキュリティー上の影響を与えかねない。

1月下旬には、EUが5G通信網におけるファーウェイ製品の使用禁止を検討中と報じられた。同じく1月下旬、英携帯通信大手ボーダフォンは、ファーウェイ製品の購入を一時的に停止すると発表した。

こうした動きは、業界にファーウェイ製品のセキュリティーに関する不安を残した。「顧客の間に疑念が広まってしまった」と、エリクソンのボリエ・エクホルムCEOは1月の投資家との電話会議で述べた。中国の5Gテクノロジーは欧米諸国より進んでいる面もあり、エリクソンも「大きな投資をしている」と彼は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:シリコンバレーから兵器開発へ、「戦争」に軸足

ビジネス

安川電機、今期の営業益予想を上方修正 足元の需要な

ビジネス

日経平均は大幅続伸、終値ベースの最高値更新 半導体

ワールド

米関税の内外経済への影響、不確実性は「依然かなり大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 6
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 7
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中