最新記事

温暖化を加速させるホットハウス現象

2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判

CLIMATE LESSONS FROM CALIFORNIA

2018年9月12日(水)18時05分
マーク・ハーツガード(環境ジャーナリスト)

アル・ゴア元副大統領(右)と『不都合な真実2:放置された地球』の試写会に出席するブラウン MARIO ANZUONI-REUTERS

<パリ協定離脱を表明したトランプに代わって、カリフォルニア州知事が気候変動対策を主導。グローバル気候行動サミットを開催中の同州では、知事と石油業界の攻防戦が行われていた。本誌9/11発売号「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集より>

※本誌9/18号(9/11発売)は「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集。驚異的な暑さと異常気象が世界を襲うなか、温暖化対策の前提や道筋が大きく揺らいでいる。目指すべき新たな道を見いだすカギは?

パリで3年前に開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、米カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンは国家元首並みの注目を浴びた。気候変動との戦いに取り組む「自治体の力」を強烈にアピールしたからだ。

何しろ当時のカリフォルニアの経済規模は、並みいる先進諸国を抑えて世界第6位。その指導者としてブラウンは世界中の自治体に呼び掛け、「2度未満連合」を立ち上げた。今世紀末までの気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満に抑えることを目標とするもので、123の自治体の賛同を得た。その後、各国政府も連合の熱意に応える形でパリ協定を採択した。

そのブラウンが、トランプ政権の妨害をはねのけて「2度未満」の目標達成に邁進すべく、9月12〜14日までサンフランシスコでグローバル気候行動サミット(GCAS)を開催する。アメリカを除く世界の主要な温室効果ガス排出国のほとんどから、知事や市長、政策専門家、ジャーナリストらが出席する。

「これは1つのステップにすぎない」。今年7月、州都サクラメントの知事執務室でブラウンはそう語った。屋外の温度は40度に迫り、空気は乾き、130キロほど北では記録的な規模の山火事が発生しようとしていた。「これで十分だろうか? 否。これで私たちは大惨事を避けられるか? 否。それでも私はできる限りのことをしたい」

GCASの開催はドナルド・トランプが大統領になる前から決まっていた。COP21の席で「クリスティアーナ・フィゲレス事務局長に請われて、よし、私がやると答えた」そうだ。

フィゲレスは、18年にカリフォルニアで注目度の高いイベントを開催し、20年にパリで開かれるCOPに向けての勢いを加速させることを望んでいた。20年のCOPでは各国が、2度を「十分に下回る」目標を達成するための改革を具体化する「行動計画」を発表することになっている。

カリフォルニア州の気候変動対策における成功は他に類を見ないものだから、GCASの開催地にふさわしい。フィゲレスはそう考えていた。

州の成功で世界を牽引

カリフォルニア州は既に、温暖化ガス排出量を1990年レベルにまで下げる方向で動いているが、15年にブラウンはさらにその先を行く法案SB350に署名している。2030年までに州内の建物のエネルギー効率を2倍に高め、電力の半分を再生可能エネルギーで賄うと定めた法案だ。

一方で、ブラウンの取り組みは不十分で、石油産業に甘いと批判する活動家もいる。化石燃料の使用禁止を求める請願運動「ブラウンのラストチャンス」によれば、ブラウンは過去7年間にエネルギー産業の利益団体から900万ドル以上の政治献金を受け取り、2万件の新たな油井掘削を許可している(現実主義者のブラウンは「今すぐカリフォルニアで石油の使用を禁じたら、どうなると思う?」と反論している)。

【参考記事】新説:「ホットハウス現象」が地球温暖化の最後の引き金に

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ザポロジエ原発にまた無人機攻撃、ロはウクライナ関与

ビジネス

欧州は生産性向上、中国は消費拡大が成長の課題=IM

ワールド

パレスチナ国連加盟、安保理で否決 米が拒否権行使

ワールド

トランプ氏「ウクライナ存続は米にとって重要」、姿勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中