最新記事

宇宙開発

リッチな人々の火星移住は近い

2016年1月26日(火)16時00分
ケビン・メイニー

 ブルーオリジンとスペースXの競争は、宇宙開発の革新と低コスト化に貢献するだろう。スペースXは宇宙旅行を可能にする前段階として、人工衛星の打ち上げ事業に参入。昨年末には衛星を打ち上げたロケットの地上着陸に成功した。

火星が独立宣言を出す?

 ベゾスは人々をほかの惑星に運ぶためにブルーオリジンを創設した。最初のロケット打ち上げは昨年4月だ。このほかリチャード・ブランソンのヴァージン・ギャラクティック社、マイクロソフト共同創業者ポール・アレンのストラトローンチ・システムズ社もあり、宇宙開発事業はまるで億万長者マラソンのようだ。不動産王ドナルド・トランプが今年の米大統領選で敗れたら、トランプ・スペースシップ社が誕生するかもしれない。

 もちろんロケットをいくつか打ち上げただけで、火星に行けると言うのは無理がある。だが富豪たちは本気だ。「私たちの最終的な展望は何百万もの人々が宇宙で暮らし、働くことだ」と、ロケット着陸後にベゾスは語った。マスクの発言はさらに壮大だ。「複数の惑星にまたがる文明社会を目指し、私たちはレーザーのように集中する必要がある。それが次の段階だ」

 作家や科学者たちは、10年以内に最初の勇敢な人物が火星への6カ月間の旅に出ると考えている。いったん技術が実証されたら、物資や人間を乗せた定期飛行が始まるはずだ。

 映画『オデッセイ』にあるように火星に一度着いたら、作物を育て、呼吸可能な空気を作り、太陽光パネルでエネルギーを作り出せる。2040年までに火星には入植による町が栄えているはずだと、マスクは言う。

 ただ、本格的な移住開始は40年以降になるだろう。火星へ行く人が増えれば飛行費用は1人当たり数千万ドルから50ドル程度まで下がる。火星に会社を設立したり、家族で移住したりする人も出始めるだろう。「休暇中の旅行ではなくなる」と、マスクは言う。彼の目標は火星の人口を100万人にすること。それが文明を維持していく最低限の人数だと考えているからだ。

 では誰が、どんな理由で火星に行くのか? 多くは自分を守るためだろう。移住費用は庶民には高過ぎるし、宇宙開発に乗り出しているのはほとんどが米企業だから、移住者の多くはアメリカ人だろうか。

 おそらく火星はいつの日か反乱を起こし、地球からの独立を宣言するのだろう。そして国境を閉ざし、暑くて悲惨な地球からの難民受け入れを拒否する。

 われわれは特別な人間だ、地球を台無しにした地球人は来るな、と火星の人々は言い、ジャスティン・ビーバーも送り返してくるかもしれない──それだけは勘弁してほしいが。

[2016年1月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米マイクロソフト、英国への大規模投資発表 AIなど

ワールド

オラクルやシルバーレイク含む企業連合、TikTok

ビジネス

NY外為市場=ドル、対ユーロで4年ぶり安値 FOM

ワールド

イスラエル、ガザ市に地上侵攻 国防相「ガザは燃えて
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    出来栄えの軍配は? 確執噂のベッカム父子、SNSでの…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中