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廃棄予定だった「牛の尿」を資源として再利用、地球の課題を解決?

Upcycling Cattle Urine

2025年4月1日(火)10時45分
酒井理恵(ライター)

避難所のストレスを軽減

廃棄予定だった牛の尿を資源として再利用し、地域を巻き込むことで、社会に循環させていく。

環境大善の「アップサイクル型循環システム」は、かつては公害のもとだった牛の尿に新たな価値を与えることで地球環境を整え、次世代に貢献するアプローチだ。農業園芸商品「液体たい肥土いきかえる」には土壌改良や植物の生長促進の効果があり、消費者は商品を使うだけで環境負荷軽減に貢献することができる。

近年は香港や台湾にも販路を開拓し、既に取引のあるカンボジアやベトナム、韓国への拡大も目指す。東アジアで自然由来の商品の需要は高まっており、牛の尿が国境をまたいだ救世主になる時代が到来しつつあるというわけだ。


窪之内は今後注力したい分野にペット、介護、災害の3つを挙げる。「ペットや高齢者と一緒に暮らす人が臭いに悩まされることなく、快適に過ごせる環境づくりを提案している。また、仮設トイレや被災地の腐敗物の悪臭を消す商品も販売している」

同商品は東日本大震災や熊本地震の際、災害支援物資として被災地に届けられた。避難生活における悪臭はストレスを引き起こす大きな要因である。窪之内は「食料やライフラインに比べて『臭い』は後から表面化する問題だ。困っている人がたくさんいることを伝え、普及につなげたい」と今後の抱負を語る。

「地域の厄介もの」だった牛の尿が、今や環境保全に役立つ存在に。地方の小さな挑戦はローカルの枠を超えて、その社会的価値を高めている。

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