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「社会貢献とビジネスの両立は可能か?」アフリカ発ブランド「Uzuri」山岸 成さんが考える「SDGsと事業」

2025年2月19日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

──地域は今後もアフリカにこだわるのでしょうか?

生産はアフリカにこだわり続けたいと考えています。生産国や出自がブランドイメージに与える影響は非常に大きいと感じているからです。例えば、ラグジュアリーブランドに関する研究では、「自国のブランドを背負わないブランドはラグジュアリーブランドではない」と主張する研究者がいます。私もその意見に賛成で、そういった価値を大切にしていきたいと思っています。

──物を売る以外のビジョンは何かお持ちですか?

物を売ることは、生産拠点での雇用創出や雇用機会の拡大に直結するので、非常に重要な要素です。ただ、それだけではなく、現地のデザイナーにもっと需要を生み出したり、アフリカのイメージをポジティブに変えることも大きな目標です。日本人にとってアフリカは「貧困」や「危険」といった印象が強いですが、卓越したクラフトマンシップがあり、高品質なアウトプットができることを伝えていきたいと考えています。

──アフリカの生産拠点の開拓は山岸さんが主に担当されているんですか?

はい。最近はその活動がほとんどですね。どの国の工場で何を作れるかを調査し、商品の品質を確認するためにいろいろな国を訪れています。

──将来のキャリア目標や目指す自分の姿について教えてください。

大きな目標としては、社会貢献と利益追求を完全に両立させたフラッグシップカンパニーを作りたいと思っています。すべてのステークホルダーがウィンウィンの関係になれるような企業を目指していて、単に利益を追求するだけではなく、関わるすべての人や地域にとってプラスになる仕組みを作りたいですね。

──最後に、若い人や若い社会人の中には、山岸さんのように社会貢献と利益性を両立して追求したいと考える人も多いと思います。そういった人たちに向けて、メッセージをいただけますか?

本音を言うと、最近はSDGsやサステナビリティという言葉が神格化されすぎている部分もあると感じています。その結果、ビジョンがあまりにも理想的すぎて、現実とのギャップが大きくなり、実行が難しくなっている人も少なくないのかな、と。僕自身も実際に事業を進める中で、理想や綺麗事だけでは続かない現実を突きつけられたことが何度もあります。例えば、現地への還元を考えすぎるあまり、利益がほとんど出なくなってしまうこともある。そうなると、どんなに良いことをやっていても継続できなくなるんですよね。

だからこそ、社会貢献だけに着目しすぎるのではなく、自分たちの幸せや持続性にも目を向けることが大切だと思います。そして、これまでSDGsという概念がなかった時代に戦ってきた人たちの知恵と、今の僕たちの考えを融合させていく必要があると思います。どちらか一方だけではなく、それぞれの良さを取り入れることで、本当に意味のある取り組みができるのではないかと感じています。

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