最新記事
BOOKS

盲信しないで疑ってみる...「我思う、ゆえに我あり」のデカルトは、疑いまくって後の科学を発展させた【3分だけ哲学】

2025年5月1日(木)11時30分
富増章成

「心」と「体」は別のもので、世界は「心」と「物質」に分けて考える

考える私(精神)と肉体(物体)はまったく異なった性質をもっています(心身二元論)。ここから、デカルトは精神と物体は異なる実体であると結論しました(物心二元論)。精神も物体もともに実体ですが、精神の属性(本質)は思惟することであり、物体の属性(本質)は延長すること(空間を占めること)ですから、これらはまったく次元の違う存在だと考えられるのです(けれども、「心身問題」も生じましたので、デカルトもここには苦労したようです)。

ここで、外部にある物体を主観はいかにして正しく捉えることができるのか(主観と客観はいかにして一致するのか)という難しい問題が生じます。精神と物体の二元論(2つがそれぞれ独立した実体)ですから、これら両者をつなぐ土台が必要です。

神の存在証明:神の存在を論理的に証明しようという試み

そこでデカルトは、論理的に神の存在証明を行います。この神の存在によって主観と客観は一致することになります。この神は、宇宙の原理としての神です。神の観念には「誠実」が含まれています。「誠実」ではない神は矛盾です。これによって、人間の理性は確実であることが保証され、人間はありのままの世界をありのままに認識できる。だから科学的判断は正しいとなります。

疑いをすすめると、どうしても目の前のペットボトルは幻覚ではないか、仮想現実ではないかという話になりますが、デカルトは、神の存在証明によって主観が客観に的中するという保証を得たのでした。

物事を客観的に捉えようとする態度で科学が発展!

さてデカルトは、精神の属性は思惟ですから、そこに自発性と自由を認めます。しかし、物体の動きについては徹底した機械論と決定論で説明しました。

これ以前は、アリストテレス・キリスト教哲学の影響で、物体と精神の境界線が曖昧でした。しかし、デカルトはこの2つをバッサリと仕切ったのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米アマゾン、今年は「プライムデー」を4日間に拡大 

ビジネス

世界の中銀、金の保有比率増加を予想 ドルの比率減少

ビジネス

需給ギャップ、25年1―3月期は1兆円不足=内閣府

ビジネス

午後3時のドルは144円半ば、日銀会合は想定内で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中