「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

AN OUNCE OF PREVENTION

2025年1月23日(木)17時44分
アレクシス・ケイサー(医療担当)

テキサス大学MDアンダーソン癌センター

MDアンダーソンでは癌のリスクを軽減するための啓発活動にも注力 THE UNIVERSITY OF TEXAS MD ANDERSON CANCER CENTER

不幸なことに、治せたはずの癌や防げたはずの癌はあまりに多い。

2019年のアメリカにおける癌の死亡例の半数近くは、喫煙、アルコール摂取、過体重など改善可能なリスク因子によるものとみられると、アメリカ癌協会発行の医学誌CA7月号に掲載された論文は報告している。


癌の治療法は目覚ましく進歩したが、患者数は減りそうにない。公衆衛生専門誌のランセット・パブリック・ヘルス8月号の掲載論文によると、3000万人超の癌患者と癌による死者を対象とした調査でX世代とミレニアル世代はそれ以前の世代と比べ、小腸、骨髄腫、腎臓、膵臓など17種の癌のリスクが高いことが分かったという。

より若い世代は幼少期から多くの発癌物資にさらされてきたと考えられると、この論文は指摘している。実際、アメリカの家庭の冷蔵庫には加工肉や合成着色料入りの食品など、多くの発癌物質が常備されている。

アメリカではこれまでも癌予防運動が精力的に展開されてきた。たばこのパッケージには警告表示があるし、乳癌啓発月間にはピンクリボンをあちこちで見かける。米政府は2047年までに癌で亡くなる人を400万人超減らす「癌ムーンショット」イニシアチブを推進している。

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ただ、呼び声は高いものの、効果はいまひとつだ。癌予防財団が昨年1月と2月に実施した最新の調査によると、10人中7人近くのアメリカ人が定期の癌検診の少なくとも1つを期限までに受けていないという。

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