最新記事
育児

2歳未満の子供でも1日平均42分...スクリーンタイムを制限すべきこれだけの理由

Screens and Children

2024年3月26日(火)13時50分
パンドラ・デワン(科学担当)
アメリカの2歳未満の子供のスクリーンタイムは1日平均42分だという DONOT6_STUDIO-Shutterstock

アメリカの2歳未満の子供のスクリーンタイムは1日平均42分だという DONOT6_STUDIO-Shutterstock

<幼児期のテレビやデジタル機器視聴は言語習得の遅れに?>

1歳半未満の子供はスクリーンタイム(テレビやタブレット端末などの画面を見る時間)を避け、1歳半~2歳では大人と教育プログラムを見るときだけに制限せよ──。アメリカ小児科学会はそう推奨している。だが米小児研究NPOゼロ・トゥー・スリーによれば、アメリカの2歳未満の子供は1日平均42分も画面を見ている。

スクリーンタイムと子供の発達の関係についてはこれまでもさまざまな研究がされてきた。今年3月に米国医師会の医学誌「JAMA小児科学」に掲載された研究では、子供が言葉を聞く体験への影響が指摘された。幼児期の言語体験は感情の発達やIQ(知能指数)、脳機能と関係がある重要なものだ。

2018~21年に220の家族を対象にしたこの研究では音声認識技術を使い、子供のスクリーンタイムと言語環境を把握。1日平均16時間、6カ月ごとに集めたデータから親子の会話を観察した。

その結果、スクリーンタイムが1分延びるごとに子供が発声したり、大人の言葉を耳にしたり、会話のやりとりをすることが減ると分かった。特に3歳児についてその関連性が顕著で、スクリーンタイム1分ごとに耳にする大人の言葉が6.6語減り、発声が4.9語減るなどした。研究者は「スクリーンタイムは幼少期の豊かな言語体験を妨げる」と結論付けている。

英ランカスター大学の発達心理学講師であるマリーナ・バジダイ(研究には参加していない)はこれについて、「複数の時点で比較的大規模かつ多様なサンプルを調査したのは意義がある」と話す。

一方で、保護者と子供の日常的な交流を妨げるデジタル機器以外の要因や、スクリーンタイムの内容が考慮されていないのは弱点だと指摘する。「コンテンツの質が高く発達段階に適切な内容なら、大人とのコミュニケーションが減ってもあまり有害ではないかもしれない」

今後は、そうした点も考慮した研究が期待される。

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市首相、「進撃の巨人」引用し投資アピール サウジ

ビジネス

中国の住宅価格、新築は上昇加速 中古は下落=民間調

ワールド

ベネズエラ国会、米軍の船舶攻撃を調査へ 特別委設置

ワールド

イスラエルの攻撃による死者数、7万人突破=ガザ保健
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中