最新記事
ヘルス

高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」

2023年10月7日(土)09時47分
高田明和(浜松医科大学名誉教授 医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載
ランニングする高齢の女性

*写真はイメージです Rawpixel.com - shutterstock


うつや認知症を招く老化を遅らせるにはどうすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「65歳以降、いわゆる老化に伴い多くなる孤立状態になると、うつの症状が出てくる。また、うつになると認知症を引き起こしやすくなる。これらの負の連鎖を避けるためには、生涯現役が理想という幻想を捨て、日々のちょっとした生きがいを持つといい」という――。

※本稿は、高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

「不安」 「孤独感」 「うつ」 の相関関係

肉体の衰えと孤独感には、非常に深い関係があります。

やはりちょうど肉体の耐用年数を超えた65歳くらいから、心を病む人が非常に増えてきます。

私の周りで多いのは、うつ病になるケースで、不眠の症状が出る人が増えています。社会的地位を失ったことや、人間関係を損なってしまっただとか、自分が陥った状況についてくよくよと思い悩んでいるうちに、寝つけなくなってしまうのでしょう。

それから、妻に先立たれて一人になった夫は、認知症になってしまうケースが多くあります。孤独感を忘れよう、亡くなった妻のことは考えないようにしようとするせいか、思考停止の状態が、だんだんと認知機能を衰えさせるのでしょう。

「不安」と「孤独感」と「うつ」は、いずれも脳の扁桃体と帯状回という部分が関連しています。

人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。

さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます。

老化を遅らせる練習

ここから逆算して考えれば、年を取ったら、うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせることになります。

そのために重要なことの1つめが、本書で詳しく述べている「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました。

2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。

のんびりお茶でも飲もうかと思ったら、仕事の依頼の電話がくる――そんな忙しい人であれば、不安になっている暇なんてないでしょう。

こう書くと「仕事がない人はどうするんだ?」と思うでしょうが、たとえば、これまで専業主婦として会社勤めの経験がない女性でも、孤立からうつになる人は、男性よりもずっと少ないことが判明しています。

それは、たとえ誰とも会わなくても、食事を作ったり掃除をしたり、家事のさまざまな「やるべきこと」があるせいで、十分に生きがいのある忙しい毎日を過ごしているからです。

「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる"特別なもの"ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。

孤立感から、認知症などの病気になる人とならない人の違いは、年を取ってからのライフスタイルや考え方に大きく左右されるということです。

ほかにどんなライフスタイルや考え方が孤独感を招くのか、どんどん明かしていきましょう。

編集部よりお知らせ
ニューズウィーク日本版「SDGsアワード2025」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、3会合連続で金利据え置き 総裁「関税動

ワールド

トランプ氏、インド関税25%と表明 ロ製兵器購入に

ワールド

トランプ氏、関税発動期限の延長否定 8月1日は「揺

ワールド

トランプ氏、FRBに利下げ改めて要求 「第2四半期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンライン…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中