犬は人の表情を読んでいる──あなたが愛犬に愛されているかは「目」でわかる

FOR THE LOVE OF DOG

2023年5月25日(木)14時55分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

230530p18NW_SGK_04.jpg

SENSORSPOT/GETTY IMAGES

この誤解は、1985年にミシガン大学の研究チームが行った有名な研究から生じた。彼らの実験では、人が門の鍵を開けるのを見ると、野生のオオカミは同じことを再現できた。

しかし飼い慣らされた犬は鍵の開け方を理解できないようだった。そうであれば、犬はオオカミよりも頭が悪いことになる。

だが90年代後半からの10年ほどで、こうした見方は大きく変わった。その原動力となったのは、ハンガリーの首都ブダペストにあるエトボシュ・ロラーンド大学の動物行動学者、ビルモス・チャニとアダム・ミクローシらが行った一連の実験だ。

冬のある日、国内の高原へハイキングに行ったチャニとその妻は、妙に人懐っこい野良犬を見つけて保護し、自宅に連れ帰った。「フリップ」と名付けられたこの犬は、たちまち家族の大切な一員となった。

フリップは「犬は知的ではない」という通念が間違っていることを示す生きた証拠のように思えた。なぜ野良犬が飼い主(人間)の生活にすんなり溶け込めるのか。そこには驚くべき進化の証しがあるのではないか。

絆の形成と幸せホルモン

「犬は十分に賢くて、人間の家庭に入っても生きていける。この適応にはかなり複雑な能力が必要とされる」とミクローシは言う。「野生のオオカミにはこれができない。種の異なる生物との間に一定の社会的関係を築くのは難しいからだ」

チャニとミクローシは、人と犬が感情的な絆を深めるプロセスをじっくり観察した。そしてそれが、人間の親と子が愛情を深めていくプロセスと似ていることに気付き、犬と飼い主の関係も同じではないかという仮説を立てた。

230530p18NW_SGK_03.jpg

FLASHPOP/GETTY IMAGES

チャニは愛犬フリップのしぐさの一部に「不思議なほどなじみがある」ものを感じた。「2歳か3歳の頃、うちの子たちはいつも私の注意を引こうとして私に触り、私に触られようとしていた」と彼は言う。そしてフリップの行動も、それと「とてもよく似て」いた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

10月経常収支は2兆8335億円の黒字=財務省

ワールド

中国機の安全阻害との指摘当たらず、今後も冷静かつ毅

ビジネス

バークレイズ、英資産運用大手エブリン買収を検討=関

ワールド

独仏首脳、次世代戦闘機開発計画について近く協議へ=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中