犬は人の表情を読んでいる──あなたが愛犬に愛されているかは「目」でわかる

FOR THE LOVE OF DOG

2023年5月25日(木)14時55分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)
愛犬

INSIDE STUDIO/GETTY IMAGES

<「鼻は利くが頭の悪い動物」という大いなる誤解。最新の研究が明らかにした、犬の隠された知力と感情。あなたは愛犬に愛されてますか?>

あなたの愛犬が、いま何を考えているか。それを正確に知るのは、たぶん無理だ。でも米エモリー大学の神経科学者グレゴリー・バーンズは、どうしてもその答えが知りたくてたまらない。

なぜか。愛犬ニュートンに先立たれたからだ。薄茶色の小型犬で、すごく人懐っこい性格だったが、20歳ちょっと(人間の年齢にすれば97歳)で旅立った。

喪失感は深く、いったい自分とニュートンの関係は何だったのかと考えさせられた。自分が心からニュートンを愛していたのは間違いない。でもニュートンはどうか。同じように自分を、愛してくれていただろうか?

以来、バーンズは100匹以上の犬の脳を画像診断で調べ上げた。そして2冊の本を出し、今や急速に発展しつつある「犬の認知科学」という研究分野のパイオニアとなった。

アメリカだけでも、犬の認知力に関する研究所はエール大学とデューク大学、アリゾナ大学、ポーツマス大学、バーナード大学、フロリダ大学にある。もちろん諸外国の研究機関にも専門部署がある。

広義の動物行動科学全般を見渡しても注目度の高い分野の1つと言える。国際的な共同研究計画「メニードッグズ・プロジェクト」は先頃第1次共同研究を完了し、その成果は年内にも発表される予定だ。

で、何が分かってきたか。まず、世の愛犬家がずっとひそかに信じていた事実が確認され、科学者が犬を見る目が変わった。犬は単なる「鼻は利くけれど頭の悪い動物」ではなく、人間の理想的な協力者や友達になり得る賢い動物だった。

彼らは長い年月をかけて脳神経を鍛え、抽象的な概念や複雑な社会力学を理解でき、人と協力できる動物へと進化していた。だから人の感情をかなり正確に読み取り、一定の言葉を理解し、合図を送ることもできる。

230530p18NW_SGK_02.jpg

古代ギリシャのレリーフに登場する犬 ZZVET/GETTY IMAGES

これが犬の科学の最前線。そこでは、バーンズを含む世界中の愛犬家が最も知りたい謎の解明も進んでいる。「おまえ、本当に私を愛してるかい?」という究極の問いだ。

動物の研究を行う科学者たちはこれまで、犬の認知能力をばかにする傾向にあった。その一因が、飼い慣らされたことで犬の知能は低下したという誤った認識だ。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中