ニュース速報
ビジネス

アングル:インドへの高級ブランド進出、実店舗スペース不足が壁に

2026年04月04日(土)11時21分

写真は3月10日、ムンバイの高級デパート、ギャラリー・ラファイエットで撮影。REUTERS/Francis Mascarenhas

Dhwani Pandya Helen Reid

[ムン‌バイ/パリ 27日 ロイター] - 経済の急成長が続くインドで、富裕層の仲間入りをし‌た数百万人もの消費者がルイ・ヴィトン、シャネル、ディオールといった高級ブランドのバッグや​アクセサリーの需要をけん引している。だが店舗数がそれほど多くないため、「店舗に足を運べない」という問題が成長のネックになりかねない。

15億人規模の人口を抱え、国内総生産(GDP)成⁠長率が6%を超えるインドは、10年超にわたって高級ブランドの​成長エンジンとなってきた中国よりも速いペースで経済が拡大している。

とはいえ、出店するのに見合う立地の不足が深刻化している中で、トップブランドは事業拡大に苦戦している。インドには真の高級商業モールが三つしかなく、それらは不動産開発会社DLFが所有するニューデリーの「エンポリオ」と「チャナキャ」、複合企業リライアンス・インダストリーズが抱えるムンバイの「ジオ・ワールド・プラザ」だ。

DLFの高級商業モール部門責任者、サウラブ・バララ氏は「モエ・ヘネシ⁠ー・ルイ・ヴィトン(LVMH)グループ、ケリング、リシュモンといった高級ブランド親会社から、インド進出を希望するブランドのためにスペースを確保してほしいという要望が絶えず寄せられている」と説明。「もしもスペースを明日提供できれば、インド進出⁠の準備が整っ​ているトップ15のブランドが控えている」としつつ、現時点では「空きスペースはゼロ」だと打ち明けた。

DLFはエンポリオの拡張を計画しており、賃貸可能面積を現在の16万平方フィートから倍増させる予定。だが、拡張スペースの稼働開始は2028年終盤になる見込みだ。

LVMH、ケリング、リシュモンはいずれもコメントを差し控えた。

<経済の勢いと富裕層の増加>

英不動産サービスのナイト・フランクの2025年版「ウェルス・レポート」によると、純資産が1億ドルを超える富裕層の人数でインドは米国、中国、日本に次いで世界4位となっている。

また、インドでは中産階級も急拡大している。ただ、調査会社ユーロモニターのデータによると、25年のインドの高級品市場は推計で121億ドルと、中国の3%未満にとどまる。

他の主⁠要地域で高級品の勢いが鈍化しているのを相殺し得る潜在力がインドにはある。だがより多くの商業モールが誕生す‌るまでそれは実現しないかもしれない。

高級商業モールのスペース不足を背景に、インドの高級品市場に未進出のブランドもある。例えばパテック・フ⁠ィリップやロ⁠ロ・ピアーナといった一部の主要ブランドはインドに実店舗を持っていない。

プラダはファッションの店舗が皆無で、美容の店舗が一つあるだけだ。シャネルはファッションの店舗が一つ、フレグランスと美容関連の店舗が7店ある。

対照的に中国では、プラダが14店、シャネルが18店をそれぞれ展開している。ルイ・ヴィトンやグッチのように中国で40―50店を手がけるブランドも珍しくない。

たとえブランド側が広々として天井が高く、柱が少なく、十分な駐車場を備えているといった超高級店に求められる要件を満たす店舗の確保を諦めるにして‌も、選択肢は限られている。

不動産コンサルティング会社、アナロックによると、インドのA級の商業モールの総床面積は約1億1000万平方フィートに​とどまり、4億平方フィー‌トを超える中国、約7億平方フィートの米国に遠⁠く及ばない。

インドの場合、都市部は衛生や公害で問題を抱えているた​め、繁華街にブランドの直営店を出すことは魅力的な事業モデルとは見なされていない。

こうした障壁があるため、一部のブランドは店舗網や資本を提供できる複合企業のリライアンスやアディティア・ビルラ・グループ、タタ・グループの各小売部門とのフランチャイズ契約をゲートウェイとしてインド市場に参入したがる傾向がある。

バレンシアガ、トッズ、ステラ・マッカートニーはリライアンスと組んで参入した。一方、ジオ・ワールド・プラザはムンバイでホテル以外では初めてとなるルイ・ヴィトンの店舗を入居させた。

<他の障壁>

一方、不動産開発‌会社は「ニワトリが先か、卵が先か」というジレンマに直面している。

高級ブランドが進出するという確固たる約束がなければ、資金調達は困難を極める。しかし、ハイデラバードで高級商業モールを開発中の不動産会社K・ラヘジャ傘下のインオービット・モールズ​のラジニッシュ・マハジャン最高経営責任者(CEO)は「資金はプロジェクトが完成間⁠近になるまで流入しない」と指摘する。

高級ブランド各社は、インドの35―40%に上る輸入関税も受け入れなければならない。この高関税があるため、インドの富裕層は高級ブランドを買う際に従来からパリやアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ、シンガポールへ向かっていた。

一部のブランドは、時間をかけて慎重に進出する姿勢を示している。

イタリア高級​ファッションブランド、プラダの最高マーケティング責任者(CMO)で、プラダ家の後継者であるロレンツォ・ベルテッリ氏は昨年12月のロイターのインタビューで、分析している中でインドは唯一の有望な新規市場だとの見解を示した。しかし、事業運営のための事務所設置を含め、進出する時期と場所を決めるには3―5年かかる可能性があると言及。

その上で「1店舗を開業する際にも、1店舗だけでなく複数の店舗を見据えた計画を立てる必要がある。なぜならば、それに伴う諸経費が多くかかるからだ」と説明した。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米戦闘機2機、イランが撃墜 乗員2人救助・1人不明

ビジネス

アングル:インドへの高級ブランド進出、実店舗スペー

ビジネス

米地裁、FRB議長の召喚状差し止めの判断維持 検察

ビジネス

米3月雇用者数17.8万人増、過去15カ月で最多 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 8
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 9
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 10
    『ナイト・エージェント』主演ガブリエル・バッソが…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中