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なぜ日本の富裕層のインテリアはダサいのか? 急成長する家具チェーンの社長が考える根本原因とは

2022年9月11日(日)12時00分
北村甲介(リビングハウス代表取締役社長) *PRESIDENT Onlineからの転載
リビングハウスの北村甲介社長

リビングハウスの北村甲介社長 撮影=小倉和徳


どうすれば「おしゃれな家」に住めるのか。リビングハウスの北村甲介社長は「必要なのはお金ではない。高級家具の配送で1000軒の家を回ったが、お金持ちの人でも9割の家は垢抜けなかった。なぜなら家具を買うときに『調和』を考慮していないからだ」という――。


「家具屋3代目」修行先で任されたのは配送だった

ぼくは24歳の頃、ある北欧系の家具メーカーで働いていました。家業を継いで家具屋になることを決心したぼくに、「まずは修行」と父が紹介してくれたのがこの会社だったのです。

「修行」と言っても、任されたのは販売でも買い付けでもなく、配送の仕事でした。来る日も来る日も、2トントラックを運転し、ひたすら家具を運び続けます。組み立て式の家具が多かったので、家の中に運び入れ、組み立てて、配置するまでがワンセット。これを1日に5~6軒ほど繰り返します。単調で、体力任せな肉体労働です。「一体自分はここで何をやっているんだ」。重たい家具を運びながら、何度思ったことかわかりません。

それでも続けたのは、学びがあったからです。売り場から届けられた家具が、実際にお部屋に配置された状態を見れるのは配送員だけ。これから家具業界で生きていくぼくにとって、他人の家を見る、家具が置かれる現場を知るというのは、貴重な経験でした。

1000軒の家を回って気が付いたことがあった

結局、配送の仕事は1年半続けたので、この間、1000軒余りの家を訪問したことになります。

多くの家を見て回る中で、気が付いたことがあります。それは、「家具がおしゃれだからといって、空間がおしゃれになるわけではない」と言うことです。

このメーカーで扱う商品の価格帯は、ソファで20万~30万円、ダイニングセットで15万円ほど。高級とまではいきませんでしたが、お店が青山にあることや、海外ブランドだったこともあってか、お客様は裕福そうな洗練された方が多い印象でした。配送先はタワーマンションや立派な戸建てばかり。夏の日のぼくは、短パン、タンクトップ姿で、汗もだらだらだったので、ご自宅にお邪魔するときは、なんだか申し訳ない気持ちになったものです。

「こんなにおしゃれで、お宅も立派なのだから、きっと中もおしゃれに違いない」。ところが、一歩家の中に入ってみると、どうでしょう。失礼ながら、垢抜けない。家具一つひとつは高級でおしゃれなはずなのに、なぜ......。

「おしゃれな家」とそうでない家の違いとは

なぜこんなお話をするかというと、こうしたお宅は1軒や2軒ではなかったからです。ぼくの感覚では、1000軒のうち、少なくとも900軒はそうした「垢抜けない家」でした。なぜそうなってしまうのか。

ぼくがたどり着いた答えは、「調和」です。人でたとえると、こういうことです。服が一流の高級ブランドでも、サイズが合っていなかったり、髪の毛がぼさぼさだったり、持ってるカバンや履いている靴が服とちぐはぐだと、台無しですよね。反対に、低価格なブランドでも、合わせるアクセサリーや、着こなしによってはすてきに見えます。服それ自体以上に、コーディネートがおしゃれを決めるポイントなのです。

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