最新記事

美容整形

顔の「お直し」で人は本当に幸せになれるのか?

Plump Lips and Wellness

2022年8月19日(金)14時41分
エレノア・カミンス
美容整形

誰もが手軽に美容整形を受けられる時代、美しさのハードルは上がる一方だ ILDAR ABULKHANOV/ISTOCK

<「ウェルネス」の延長線上になった美容整形。しかし、自尊心を高める効果はあっても、心の健康・幸福感にはつながらないという研究も。そもそも「美の基準」を決定しているのが「他者」であるという問題が>

美容整形の目的は外見を変えること──のはずが、心の治療として体の改造を推すセレブや医師、経験者は少なくない。

世界的に有名なブラジルの美容外科医イボ・ピタンギはかつて、「美容整形は軽薄な行為ではなく、自尊心の再構築であり回復だ」と述べた。

テキサス州のとある美容クリニックの宣伝文句を借りるならば「整形は自分への愛」。そして、最近はこうした考え方が世間にあふれている。

美容整形に関する論文の多くが、施術は「喜びと満足感と自尊心を高める」と主張する。メディアは10代の少女の心の健康と絡めて整形を肯定し、企業のブランド戦略と広告がさらに流行を後押しする。

メスを使わないプチ整形専門の美容外科チェーン、アルケミー43に言わせれば「最高のルックスと気分を手にする資格は万人のもの」なのだ。

こうした風潮を受け、整形は今や「ウェルネス」の延長線上にある。体の改善が心の健康につながるというのだ。

鼻をいじったくらいで心が健やかになるとは思えないかもしれない。だが「あごの線がもう少しシャープならもう少し幸せになれるのに」といった願望は、誰しも身に覚えがあるのではないだろうか。場合によっては整形に自信を高める効果があることは、科学的に証明されている。

2018年に専門誌「皮膚科外科手術」で発表された研究で、ペンシルベニア大学病院のジョセフ・ソバンコ准教授の研究チームはしわやたるみを補正する注入治療が自意識に及ぼす影響を調べた。

75人を対象に、施術の前と後で自分のボディーイメージに対する満足度を調査。「デリフォード外見尺度」を使用し、「海水浴に行くと、どの程度気分が沈みますか?」といった質問に答えてもらった。すると被験者の実に75%で、術後の満足度が上がった。

「私には誇れるものがあまりない」といった記述への反応を見る「ローゼンバーグ自尊感情尺度」を使い、自己肯定感も測定した。こちらは施術の前後で変化はなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メルセデス、中国パートナーとの提携に投資継続 「戦

ビジネス

日経平均は大幅反落800円超安、前日の上昇をほぼ帳

ビジネス

焦点:国内生保、24年度の円債は「純投資」目線に 

ビジネス

ソフトバンク、9月30日時点の株主に1対10の株式
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中