最新記事
ヘルス

ある日突然「人工透析です」と告げられたら? 高血圧、高血糖、高コレステロールの人が知らない『あるリスク』

2021年7月4日(日)11時20分
牧田善二(AGE牧田クリニック院長) *PRESIDENT Onlineからの転載
超音波と解剖モデルを用いた腎臓病の診断

ある日突然「人工透析が必要です」と言われないようにするためには? *写真はイメージです peakSTOCK - iStockphoto


これまで20万人超の患者を診てきた牧田善二医師は、「人間ドック等で行われる血清クレアチニン検査では腎臓が悪化していく過程を捉えられず、結果、いきなり『人工透析です』と言われる人が続出している」と警鐘を鳴らす。特に高血圧、高血糖、高コレステロールの人はリスクが高いため、尿アルブミン検査を受けるべきというのだが──。

※本稿は、牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「あるとき突然、透析」の恐怖

55歳の女性Aさんは、自宅近くの不動産会社で平日の9時から15時まで働いています。結婚前、建築関係の企業に勤めていたときに宅建の資格を取得しており、時短勤務とはいえ、Aさんは会社にとって貴重な戦力として活躍しています。

子育てが一段落したこともあり、休日には夫婦揃って旅行をしたり、仕事が終わってからの時間は映画を観たりと、充実した生活を送っていました。「いました」と過去形にしたのは、Aさんにとって予想外のことが起きたからです。

Aさんは、40歳を過ぎてから血糖値の高さを指摘されていたものの、かかりつけの病院で糖尿病の治療を受けていたことから安心していました。しかも最近は、ヘモグロビンA1cの値が大幅な改善傾向にあって喜んでいたのです。

ところが、ある日いきなり主治医から「透析専門の病院を紹介しますから、これからはそちらに通ってください」と言われてしまいました。

医者もわかっていない「腎臓病の進行プロセス」

「透析? 私が? なんで?」
「ヘモグロビンA1cだって良くなっていたじゃないの!」

人工透析は、5時間ほどかかる治療を週に3回も受けなくてはなりません。とても旅行どころではないし、勤めも続けることはできないでしょう。また、55歳の女性が人工透析に入ると、余命は15年も短くなってしまいます(透析学会、2004年データより)。

「私の人生これから!」と思っていたAさんは、大変なショックを受けました。しかし、取り乱すAさんに、主治医は血液検査の「血清クレアチニン」という項目の数値を示して、「こうなると、もうどうしようもないのです......」と、淡々と説明するだけでした。

実際の医療現場でも、Aさんのようなケースはよくあります。患者さんはちゃんと糖尿病の治療を受けていて、なにも問題はないと思っている。ところが、腎臓がいつの間にかひどいことになっていて、いきなり医師から「人工透析が必要だ」と告げられるのです。

このような悲劇が繰り返されるのにはもっともな理由があって、Aさんの主治医が指標にしていた「血清クレアチニン値」では、慢性腎臓病を早期に発見することはできないのです。

「インスリンすら解毒できない体」の恐ろしさ

Aさんは、人工透析が必要なほど腎臓の状態が悪化していたにもかかわらず、ヘモグロビンA1c値は改善に向かっていました。いったいぜんたい、どうして、そんなことが起きたのでしょうか。

実は、皮肉なことに糖尿病の合併症の腎症がかなり進行すると、血糖値のコントロールが良くなるのです。なぜなら、腎機能の悪化で「インスリン」すら体外に排出できなくなってしまうからです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エプスタイン氏自家用機8回搭乗 司法省

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

銅価格、1万2000ドルの大台を突破し最高値 今年

ワールド

国連安保理、ベネズエラ情勢巡り緊急会合 米「最大限
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中