ホアキン&ペドロがコロナ禍で狂った町で激突――不快なのにクセになる、アリ・アスターの風刺劇『エディントンへようこそ』

COVID Fever Dreams

2025年12月12日(金)18時59分
サム・アダムズ (スレート誌映画担当)

コロナ禍の狂気は猛威を振るい、やがて映画全体を乗っ取る。終盤の20分ほど自由奔放でイカれた映像を、これまでアスターはスクリーンに焼き付けたことがない。この血みどろの笑劇には、コーエン兄弟も「よくやった」とエールを送るだろう。

ジョーが世界と対峙しようと体の向きを変えれば、カメラも一緒に向きを変える。聞こえるのは彼の肺の中のぜえぜえという息遣いだけ。観客の私たちは彼がコロナの熱に浮かされて見た夢に吸い込まれ、出られずにいるようだ。

『エディントン』は癇(かん)に障るし、マスク着用や警察の暴力をめぐって対立する人々をやや極端に描きすぎてもいる。

ベタなギャグや文化や歴史からの引用が満載され、とても1度の観賞では拾い切れない。だが2度も見るのはよほどのマゾか、物好きだけだろう(幸い私はどちらにも当てはまる)。

アスターが目指したのはアメリカ社会に染み付いた精神の病、いわば慢性化した魂のコロナをあぶり出すこと。それはワクチンも身を守る術もなく、距離を取ればむしろ悪化するタチの悪い病気だ。

EDDINGTON
エディントンへようこそ
監督╱アリ・アスター
主演╱ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル
日本公開は12月12日

©2025 The Slate Group

【関連記事】
『ジョーカー』怒りを正当化する時代に怒りを描く危うい映画
キム・カーダシアンは「賢くて、謙虚」...グレン・クローズが飛び込んだ「女だらけ」の法廷ドラマの舞台裏
構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガロポリス』は、ある1点で『スター・ウォーズ』を超える?

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、グリーン氏辞任の下院議員補欠選挙

ワールド

EU大使、ウクライナ向け900億ユーロ融資の詳細で

ワールド

バンス氏とルビオ氏どちらが有力後継者か、トランプ氏

ビジネス

ソニーG、通期純利益3回目の上方修正 継続事業ベー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流していた? 首相の辞任にも関与していた可能性も
  • 4
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 5
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    電気代が下がらない本当の理由――「窓と給湯器」で家…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中